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医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

あなたの生活が苦しいのはあなたのせいではない

府医ニュース

2020年3月4日 第2921号

 『皆さんには貧しくなる自由があるということだ。何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただひとつだけ、その時に頑張って成功した人の足を引っ張るな』。竹中平蔵氏が若者に向けた言葉である。
 今、私の外来では、保護者や祖父母ではなく、知り合いの大人、もしくは、兄弟に連れられて受診する小児患者を見かけるようになった。初めは驚いた。しかし、年に数回のレベルを超えてしまい、対応しなくてはいけない状況である。ご両親ともに仕事を休めない事情が理解できるようになった。高齢者も言葉通り這うようにひとりで来院というケースもある。
 平成28年度のデータでは、我が国の子どもの貧困率は13.9%。およそ7人に1人の子どもが貧困状態に陥っている。ひとり親世帯の貧困率は5割を超えている。前述の「勝手に貧しくなれ、そして頑張った人の足を引っ張るな」という意見に同意はできない。子ども、いや、貧しさにある人々の自己責任の割合よりも、政府の経済政策の失敗、もしくは、意図して非正規雇用を生み出そうとしている構造によって引き起こされたものではないか。
 診察室で信頼関係が構築された上で、ひとり親家庭の父親や母親に聞いてほしい。「今、生活大変?」と。何人ものひとり親が職場や家庭、地域で自分の置かれているつらい立場を吐露し涙するはずだ。
 「病気だけ診ていればいい、介護の問題もかかりつけ医は相談に乗りましょう」というレベルを超えてしまっている。地域のかかりつけ医として何をすべきか、医師会を通じ行政に何を訴えていくべきか、一人ひとりが考えていく時期になったのではないだろうか。
(真)