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医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

世代の分断策に乗るべからず

府医ニュース

2019年12月18日 第2913号

 増加する医療費と後期高齢者の窓口負担を巡り、政府は現在の原則1割から2割に引き上げる方向で検討をするという報道がなされた。世代間の公平性を確保するのが狙いだそうだ。
 まず、世代間不公平という言葉について。高齢者と労働世代では疾病のリスクも異なる。高齢者にかかる医療費に対し不公平という見方がいかに間違っているか医療者なら実感できるだろう。高齢者を世代で支えるという見方も大事だが、世帯で支える大変さにも思いを馳せるべきではないか。高齢者の医療と介護の負担は同じ家族の下の世代にかかってくるのだ。若者個人への税負担が問題になっている昨今、彼らの更に悲惨な将来を想像できないのか。
 2つ目、増え続ける高齢者の医療費という財源がないかのような論調について。通貨発行権がある我が国において、医療費で国家破綻を来す(医療費亡国論)とするのはあまりにも短絡的だ。むしろ、政府支出により医療費をサポートできるなら、それが雇用促進につながり、医療職や周辺職種の収入増により経済は回るであろう。
 一方、識者の中には、ALL for ALLという言葉で世代間含めあらゆる格差を乗り越えるために消費増税を訴える者がいる。しかし、今回のような社会保障の安定化を目的として行われた消費増税の結果、予想通り医療の緊縮政策が提案されたではないか。逆進性の高い消費税で格差を解消できるはずがなかろう。
 結局、患者の窓口負担増と医療費削減はコストとして社会保障費を削るというのは新自由主義の流れにあるのだ。それを、若い人達を守るようなプロパガンダには毎度のことながら辟易とする。若者を守るために窓口負担減であり経済成長であり、その上での医療の充実である。医療者もそろそろ緊縮思想から脱しようではないか。(真)