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タスクシフティング

府医ニュース

2019年12月4日 第2912号

~特定行為研修制度の現状~

 医師の働き方改革により、勤務医の時間外労働の上限規制が2024年4月から適用される。一方、国は医師の需給バランスが2036年には均衡する見込みを示しているが、医師の労働時間規制が行われる4年半後までに俄かに医師不足が解消されるわけではなく、むしろこの時期には医師不足は今より更に深刻さを増している可能性がある。
 そのような状況下、医師の業務の一部を医師以外の医療従事者に業務移管(タスク・シフティング)することで医師の労働時間短縮の一助にしようとする対策が進められている。厚生労働省は10月23日、「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会(以下、検討会)」の初会合を開催。現行制度下で可能な領域におけるタスク・シフティングの最大限の推進、および多くの医療専門職種のそれぞれの能力を活かし、より能動的にタスク・シフティングできる仕組みの整備について検討を進め、12月中に取りまとめを行う方針としている。
 医師の業務移管については、過去に「特定看護師(仮称)」の制度化、更にはNP(ナース・プラクティショナー)、PA(フィジシャン・アシスタント)の導入などが議論された。NPは、看護師の上位資格で、アメリカなどで制度化されている。国により資格要件、業務内容は異なるが、アメリカ以外にもカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどの国で導入されており、NP資格により、診断、検査指示、薬の処方、紹介などの業務が医師の指示を受けずに自らの判断で可能となる。
 一方、PAが資格化されている国もある。これは医師の監督下、診察、薬の処方、手術の補助など医師の行う医行為の相当程度をカバーできる。我が国ではこれら制度の導入・法制化は見送られたが、NPについては、2008年から一部の大学院修士課程で教育がスタートしている。
 一方、「特定行為に係る看護師の研修制度」が2015年10月1日に施行され、特定行為研修を行う指定研修機関は年々増加し、2019年8月現在で134機関。また、これら機関が年間受け入れ可能な人数(定員数)は1521人、研修修了者は、2019年3月現在、1685人となっている。特定行為区分別では、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」が最も多く、次いで「創傷管理関連」「血糖コントロールに係る薬剤投与関連」となっている。
 検討会では医師以外の医療専門職種が現行制度下で「実施可能な業務」「明確に示されていない業務」「実施できない業務のうち、十分実施可能で法改正等を行えば実施可能となる業務」の3つに分けて検討するとしている。タスク・シフティング推進の目的が医師不足・医療費削減対策に主眼を置いたものであってはならず、医療安全の面からも、その適用は慎重であるべきである。