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時事

がん検診指針、改正に向けての議論

府医ニュース

2019年11月27日 第2911号

デメリットの説明も重視

 11月13日、厚生労働省「がん検診のあり方に関する検討会」第29回の会合において、議論の中間整理(骨子案)が提示された。同検討会は昨年来、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(以下、指針)」(平成20年策定、28年2月最終改正)の改正に向けて、議論を重ねてきた。
 「見直しの方向性」として、以下の4点を示した。
 (1)利益(メリット)・不利益(デメリット)…がん検診のメリットは、死亡率減少効果や、陰性と判定された場合の安心感等、定量的な評価が可能である。一方、デメリットは、偽陰性、偽陽性、過剰診断(生命予後に影響しない微小で進行の遅いがんの発見)、陽性と判定された場合の不安等があり、それぞれの重みも異なる。メリット・デメリットについて、全受診者に説明している市町村は約6割にとどまることから、市町村および検診実施機関に対し、説明の重要性を周知し、資材の活用や見直しを行う。
 (2)種類…指針に定めるがん検診の種類は、実施される検査方法が対策型検診として「死亡率減少効果を示す十分な証拠があるので実施することを強く勧めるもの」または「相応な証拠があるので実施することを勧めるもの」とし、指針に定められていないがん検診は、科学的根拠(推奨グレード)の違いに応じた在り方を検討する。
 (3)対象者…受診を特に推奨する者について検討する。ただし対象者のうち、これに該当しない者も、これまでどおり受診可能であることに留意する。年齢ごとの推奨度合いの提案に向け、検討する。
 (4)対象者のリスク(喫煙率やヘリコバクター・ピロリ感染等)に応じたがん検診の在り方…今後議論を行う。
 「2021年度以降の対策型がん検診」については、①受診を特に推奨する者の検討②市町村および検診実施機関が実施すべき精度管理上の取り組みの整理③受診率向上のため、個別受診勧奨(コール)・再勧奨(リコール)等の着実な取り組みを進め、女性のがん検診については、ライフステージを踏まえた対策を検討とした。
 「新たな検査項目の導入検討に当たっての基本的な考え方」では、疫学的な背景、検査方法、運用方法等の観点から、〝公費で実施されるため、受益と負担(費用対効果の評価)等の観点から、国民の理解を得られるプログラムであること”を含め、11の条件を提案している。
 さて、昨年3月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」では、検診に関して〝指針に基づかない方法で行っている市町村の現状を把握し、必要な働きかけを行う”〝不利益についても理解を得られるように、普及啓発活動を進める”との記載がある。また、前回の検討会では、受診率向上のために、かかりつけ医からの受診勧奨や結果説明が重要との議論がなされている。
 対策型(住民検診型;集団全体の死亡率減少を目的に公共施策として実施)と任意型(人間ドック型)の違いを含め、かかりつけ医はがん検診について、十二分に理解を深めることが求められる。(学)