TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

綱渡り

府医ニュース

2019年10月30日 第2908号

 最近議論されている医師の働き方改革について考えるとき、私事ですが、思い出すことがあります。
 約30年前、まだ子ども達が幼かった頃、勤務医だった夫は週末もほとんど仕事に行っていました。私は当時大学病院に勤務していましたが、まだ週休二日制ではなく、月曜日から土曜日までフルタイムで働き、週末はひとりで子ども達をみながら家事をしていました。私にとっても実質何週間も一日も休みがないのと同じことでした。
 上の子がひとりで外に出て行っても、下の子がまだ乳児なので、私がすぐに追いかけることができませんでした。上の子が事故に遭わなかったのは、運が良かったとしか言えません。
 当時は育休も時短制度もなく、産休明け(産後8週間)でフルタイム復帰か退職かの二者択一でした。自分で強く望んで医師になった私には退職はあり得ませんでした。
 綱渡りのような日々でしたが、夫にとって若い時に休みなく働いた経験は、その後の役に立っていると思いますし、私も長期に休まずに働き続けたことは、医師としては無駄ではなかったのかもと思います。
 子ども達も今は社会人になりました。綱渡りを綱から落ちることなく渡り切れた(たぶん)のは、周囲の協力のおかげはもちろんですが、加えて運が良かったからだと思います。それらに感謝するとともに、運の良さをあてにせずに女性医師が、ひいては医師全体が働きやすい環境とは何かと考え続けていますが、単純明快な答えはまだ見つかりません。
(瞳)