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かかりつけ医認知症対応力向上研修

府医ニュース

2019年9月18日 第2904号

地域で寄り添い、ともに生きる

 大阪府・大阪市・大阪府医師会が主催する「かかりつけ医認知症対応力向上研修」が8月24日午後、府医会館で行われた。本研修会は認知症への理解をより深めるために例年実施しており、4編に分けて講演を企画。約350人の会員が聴講した。

 当日は黒田研二氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員長)が座長を務め、最初に宮川松剛理事があいさつ。地域ケア会議への参画をはじめ様々な協力に謝意を表した。また、認知症については「地域で寄り添うこと」が求められており、かかりつけ医が「地域の要」として活躍することが重要だと述べ、理解を求めた。

鑑別診断が重要 留意点など示す

 診断・治療編では、中西亜紀氏(大阪市立弘済院附属病院副病院長・認知症疾患医療センター長)が、「認知症疾患診療ガイドライン2017」を引用しながら解説した。まず、家族が認知症様の変化に気付いてから医療機関を受診するまでの期間が長いことに触れ、不安感の増強や意欲の低下など、「今までと違う変化があれば認知症を疑うことも必要」と指摘。一方で、認知症かどうかの鑑別が重要とし、ガイドラインに基づく診断のプロセスを概説した。続いて、▽アルツハイマー型認知症▽レビー小体型認知症▽前頭側頭型認知症▽血管性認知症▽嗜銀顆粒性認知症▽若年性認知症――を詳説。病態や画像・検査での特徴的な所見、治療法、診察上の留意点などを伝えた。またMCI(軽度認知障害)段階での対応や認知症本人・家族への支援にも言及。地域で連携し「ともに歩むことが大切」と結んだ。

かかりつけ医は 「安心」与える存在

 かかりつけ医の役割編では、塚本雅子氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が登壇。認知症の人や家族を支えるために「かかりつけ医ができること」として講演した。まず、認知症の方であっても、「気持ちの部分は健常者と変わらない」とし、特別な対応をする必要はないとの見解を示した。また、かかりつけ医の役割は「認知症の人に気付き、受け入れ、支えること」だと強調。ともに生きるという視点で接してほしいと語った。
 連携編は辻正純氏(同委員会委員)が説明。はじめに、認知症は医療だけではなく地域全体で支えることが必要と前置き。ACP(人生会議)に触れながら、本人の望む形で、医療・介護・福祉が連携する重要性を説いた。その上で、「早期からの支援体制を構築すること」が大切だと指摘。かかりつけ医を中心とした切れ目のない医療連携の中で多職種が協働し、患者・家族に寄り添うことが地域の安心につながると述べた。
 制度編では、玉井恵子氏(大阪府福祉部高齢介護室介護支援課認知症・医介連携グループ総括主査)が大阪府における主な認知症施策に言及。新オレンジプランの7つの柱に基づき、▽認知症への理解や啓発の推進▽早期発見の推進および地域連携体制の強化▽認知症医療体制の充実▽認知症ケア人材の育成▽若年性認知症施策の推進▽介護者への支援の促進▽高齢者にやさしい地域づくり――に取り組んでいるとし、それぞれを詳しく解説した。特に、民間企業や団体と締結した「高齢者にやさしい地域づくり協定」を強調。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる街づくりを実現したいと締めくくった。