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医師・医療関係者のみなさまへ

認知症サポート医フォローアップ研修

府医ニュース

2019年8月21日 第2901号

「共生」と「予防」つなぐのは医師

 大阪府医師会・大阪府・大阪市主催による令和元年度第1回認知症サポート医フォローアップ研修が7月17日午後、府医会館で開かれた。当日はサポート医のほか、認知症地域支援推進員や認知症に関わる多職種ら約400人が参加した。

 冒頭、中尾正俊副会長はあいさつで、大阪府内で活躍している約500人の認知症サポート医に謝意を示すとともに、本研修会が活動の幅を広げる一助になればと期待を寄せた。また、6月に決定した「認知症施策推進大綱」に触れ、認知症の方が地域と共生しながら「希望を持って」生活できるよう支えてほしいと述べた。

認知症施策推進大綱 背景や趣旨など解説

 黒田研二氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員長)が座長を務め、はじめに、金田大太氏(大阪市立弘済院附属病院神経内科部長/認知症疾患医療センター副センター長)が、「これからの認知症診療と地域包括ケア」と題して講演を行った。まず、我が国の認知症施策を振り返り、「世界をリードするもの」と評価。官民が一体となって支える体制が構築されていると述べた。一方で、認知症の疑いから診断まで、診断後の社会支援・介護サービス導入までの「空白期間」に言及。これらが前提となり、「共生と予防」を柱とする『認知症施策推進大綱』につながったとした。その上で、予防とは、「認知症になるのを遅らせる、進行を緩やかにすること」だと強調。認知症のリスク因子を解説するとともに、▽長期的な抗コリン薬投与▽ビタミンB12欠乏――などへ注意を促した。加えて、「共生」の場として、地域の住民が主体となって「通いの場」を提供することが重要だと指摘。大阪市の施策として「いきいき百歳体操」「かみかみ百歳体操」を紹介し、その実施状況を報告した。更に金田氏は「自分が希望するケア」を周囲に伝えておくことが大切とし、元気なうちからACP(アドバンス・ケア・プランニング/人生会議)を活用してほしいと語った。最後に、認知症治療のゴールは本人・家族・介護者と安心感を共有することとの見解を提示。医師がアンカー(錨)となり、「共生」と「予防」をつないでほしいと結んだ。

不眠の原因いろいろ 丁寧な問診で確認を

 引き続き、吉田祥氏(大阪精神科診療所協会理事/吉田診療所院長)が、「高齢者における睡眠の問題とその治療」と題して講演。不眠症は様々な要因が関係しており、安易な睡眠薬投与で解決するものではないとし、非薬物療法との適切な組み合わせが重要との考えを示した。

 吉田氏はまず、昨今の睡眠薬や向精神薬の処方が制限される流れを不安視する一方で、処方の見直しを行う契機になればと示唆。時間をかけて転薬あるいは卒薬を目指してほしいと促した。次いで、高齢者が訴える「眠れないイコール不眠症」ではないと明言。不眠症状の背景にある5つのP、3つのPから問題を見極めて対応することが大切だと語った。その上で、不眠症と診断されるのは「不眠症状全体の約2割程度」とのデータを挙げ、「睡眠薬を処方するだけでは治癒しない」と説示。丁寧な問診を心がけ、不眠の背景にある原因を精査してほしいとまとめた。