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医師・医療関係者のみなさまへ

第314回府医定例代議員会

府医ニュース

2019年7月3日 第2897号

外来医療抑制・開業規制に反対

 第314回大阪府医師会定例代議員会(岡原猛議長/定数271人)が6月20日午後、府医会館で代議員187人の出席により開催された。平成30年度決算など3議案が上程され、いずれも異議なく承認された。

平成30年度決算などを承認
事業見直し・経費削減に努める

 冒頭、茂松茂人会長があいさつ。まず、6月18日に発生した山形県沖を震源とする地震に触れ、被害に遭われた方々にお見舞いの言葉を寄せるとともに、1日も早い復興に期待を寄せた。また、南海トラフ地震が近い将来に発生すると予測されているとし、備えを怠ることはできないと呼びかけた。
 続いて、改元に伴い10連休となったゴールデンウィークの医療体制に言及。大きな混乱なく乗り切れたとし、会員の協力の賜物であると謝意を表した。

社会保障の充実が喫緊の課題

 引き続き、我が国の医療を取り巻く情勢について解説。国が持続可能な社会保障を構築するために、給付を抑えるか、負担を引き上げるか、あるいはその両方を断行するかといった視点で議論を行っているとし、夏の参院選後、給付と負担のあり方が大きな論点となるとした。更に、消費不振の最大の原因が人々の将来への不安だと明言する経済界からの声も紹介しつつ、社会保障制度の充実が、経済の好循環にもつながる喫緊の課題であると訴えた。

医師の使命として国民の命と健康を守る

 地域医療を巡る諸問題については、地域医療構想、医師偏在対策、医師の働き方改革を三位一体で推進する方針を、国が強調していると説明。医師偏在指標の問題などを指摘した上で、こうした議論の背景に、医師配置や医師数の管理を目論む国の考えが見え隠れしており、注視していく必要があるとした。更に、新専門医制度におけるシーリング、オンライン資格確認、訪日・在留外国人の医療、審査制度改革、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)への関わり方など、医療を取り巻く諸問題を列挙。非常に厳しい医療情勢の中、「国民の命と健康を守ることが、我々医師の一番の使命」と訴えた。
 なお、平成30年度の決算状況について、経費削減に努めた結果、昨年に比べて2億2600万円余りの財産が増加するなど、安定した決算となっていると報告する一方、看護専門学校の3年後の閉校に向けて、本年度以降、本会会計から多額の支援を行う必要があると説明。今後も事業内容を見直すとともに経費削減に努めるとし、理解と協力を求めた。
 続いて、栗山隆信理事による代議員12名の異動報告および中尾正俊副会長による平成30年度事業報告が行われた。
 議事では、第1号議案「平成30年度府医決算に関する件」、第2号議案「令和2年度府医会費賦課徴収に関する件」、第3号議案「令和2年度府医新入会員に対する会館設備資金応益負担金の賦課徴収に関する件」について協議。いずれも挙手多数で執行部原案どおり可決決定された。
 第1号議案では、北村良夫理事が3月末時点の貸借対照表などの資料に基づいて詳細に説明。資産合計は約120億6千万円、負債合計は約14億9千万円。正味財産合計は約105億7千万円で、前年度比約2億3千万円余の増額となった。経常費用計は約33億4千万円。北村俊雄監事より適正であったとの監査報告が述べられた後、議場に諮った結果、同議案は賛成多数で承認された。

決議を採択 国民皆保険制度を守る

 協議では、高井康之副会長より医師偏在指標を利用した外来医療抑制・開業規制への反対をはじめとする5項目の決議を提案し、挙手多数により採択された。

決  議

 6年半に及ぶ大規模な金融緩和は、結局、大企業の内部留保を積み上げただけで、大多数の国民の収入増にはつながらず、いまだに消費低迷が続いている。その原因は、国民の将来への不安であり、このような状況下においては、社会保障制度の充実こそが国民に安心を与え、経済の活性化につながり好循環へと導かれるものと信じる。
 日本人の平均寿命は、この60年間で20年近く伸びた。これは、全ての国民が医学の進歩の恩恵を、国民皆保険制度を通じて、あまねく享受出来たことによる。厚生労働省は健康寿命延伸プランを策定し、2040年までに健康寿命を3年以上延ばすことを目標に掲げている。そのためには、国民皆保険制度をゆるぎないものにし、今後も国民が必要な時、適切な医療を経済的不安なく受け続けることが必須であることはいうまでもない。
 一方で、政府は医師と医療機関の地域偏在に対する対策と称して、科学的検証のなされていない医師偏在指標を掲げて、外来医療計画策定を推し進め、外来医療を管理し規制しようと企図している。地域の実情を無視した強引な手法を許すべきではない。
 地域医療構想では、政府が過剰と称する急性期病床から回復期病床への転換が進まないことから、知事権限を強化し、医療費抑制を目的とする病床転換を強引に進めようとしている。この様なことでは、今後、高齢化の進展に伴い急増する高齢者の救急に十分に対応できない。
 医師の働き方改革においては、医師の長時間、過重労働を是正することは非常に重要であることは当然だが、救急や高度急性期医療などの地域医療の確保を勘案し、必要な財源の確保と医療の受診の在り方を含め国民の理解を求めながら体制の構築を図る必要がある。
 財政審財政制度分科会では、保険給付範囲の在り方の見直しを掲げて、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」の原則を徹底させるとしている。少額受診に追加負担を求め、さらに薬剤の有用性に応じて自己負担の引き上げを提言している。このような施策は受診抑制につながり、ひいては疾病が重篤化してからの受診が増加する危険がある。
 医療に関する行き過ぎた自己責任論は、「やむを得ないリスク」をもカバーしてきた国民皆保険制度を形骸化させ、その存立さえ危うくさせる。我々は、「国民医療を守る」という信念で一致団結し、国民に本来の社会保障制度の在り方を問いかけていくとともに、全ての国民が安心して安全かつ質の高い医療を受けられるよう下記事項を要望する。



 一、科学的根拠の乏しい医師偏在指標を利用した外来医療抑制・開業規制に反対
 一、受診抑制につながる受診時定額負担導入に反対
 一、地域医療構想における知事権限強化による強制的な機能分化に反対
 一、医師の健康への配慮と地域医療の継続性を考慮した医師の働き方改革を求める
 一、国民皆保険制度を守るため十分かつ安定した財源の確保

 令和元年6月20日
一般社団法人大阪府医師会
第314回(定例)代議員会