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府医ニュース

2019年6月26日 第2896号

◆アメリカでは1973年に女性の権利として人工妊娠中絶を合憲とした連邦最高裁判所のロー対ウェイド判決がある。これに対して今年、宗教的に生命倫理を重んじる11の州で人工妊娠中絶を禁止する州法が相次いで成立し、大きな政治論争に発展している。
◆しかし、このアメリカを含む世界の60カ国以上では今、薬剤による妊娠中絶、緊急避妊薬の使用が主流となっている。市販薬として安価で入手でき、72時間以内の使用での妊娠率は数%以下と有効率はかなり高い。
◆一方、日本では、母体保護法により人工妊娠中絶が認められているが、逆に安全で手術より体への負担が少ない緊急避妊薬へのアクセスが困難なのが現状である。平成29年度の人工妊娠中絶件数は約16万5千件で、多くの女性それぞれに、身体的、精神的苦痛があったに違いない。
◆今回、オンライン診療での緊急避妊薬の処方が了承されたが、そのアクセス体制は甚だ機能的とは言い難い。女性の健康と権利を守る見地から、苦悩する現場の声に応える必要がある。(誠)