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医師・医療関係者のみなさまへ

障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会

府医ニュース

2019年2月27日 第2884号

大阪府委託事業

 大阪府医師会は、平成30年12月6日午後、大阪府からの事業委託を受け、府医会館で「障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会」を開催。会員ら約90人が受講し、障害支援区分の決定に重要な役割を果たす「医師意見書」の記載や障害者制度に関する理解を深めた。

 司会・座長は、李利彦氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会副会長)が務めた。まず、中尾正俊副会長のあいさつ(別掲)に続き、吉岡美紀氏(大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課長補佐)が「障がい者制度と最近の動向について」と題して講演。障害福祉サービス等の利用者数や過去10年間の医療・介護・障害の総費用額などの増加傾向を示した。また、いわゆる「障害者総合支援法」のほか、「障害者虐待防止法」「障害者基本法改正法」「障害者差別解消法」の成立など、近年の障害者関連施策の動きを振り返った。更に、30年4月から障害者総合支援法等の一部改正により、▽地域生活を支援する新たなサービス(自立生活援助)の創設▽就労定着に向けた支援を行う新たなサービス(就労定着支援)の創設▽重度訪問介護の訪問先の拡大――などが位置付けられたと説明した。
 続いて、障害者の支援の度合いに対する総合的な指標である「障害支援区分」の審査判定プロセスについて概説。コンピュータによる一次判定では認定調査員項目と医師意見書(24項目)、市町村審査会による二次判定では特記事項および医師意見書(一次判定で評価した項目を除く)により判定を行うとした。医師意見書は、いずれの判定でも重要な役割を果たしていると強調。更に、一次判定からの区分変更には、医師意見書の記載なども根拠としているとした。障害支援区分に基づいて障害福祉サービスを利用することになるため、医師意見書作成の際には「記載漏れ」と「分かりやすい記載」に十分留意してほしいと呼びかけた。
 そのほか、「障害者差別解消法」における「不当な差別的取り扱い」「合理的配慮」に関して説明。不当な差別的取り扱いにおける正当な理由の判断の視点や、合理的配慮における過重な負担の基本的な考え方に触れ、個別の事案ごとに様々な観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するよう求めた。また、大阪府障がい者差別解消条例に基づく相談と解決の流れに関して紹介した。

医師意見書作成のポイントを解説
行動・精神等の状態示す

 その後、中村芳昭氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会理事)が登壇し、「医師意見書の書き方のポイントについて」と題して講演を行った。
 中村氏は、医師意見書の項目のうち、「行動及び精神等の状態に関する意見」について詳しく解説。同欄の①行動上の障害②精神症状・能力障害二軸評価③生活障害評価④精神・神経症状⑤てんかん――のチェック項目の評価基準に関して自身の経験を交えてアドバイスした。加えて、自立支援医療などで判定時に考慮される病名として、器質性精神障害や統合失調症、気分障害などを分かりやすく説明した。
 講演後には質疑応答が行われ、聴講者との活発な意見交換がなされた。

 障害者総合支援法の対象となる障害者が、障がい福祉サービスを利用するためには、障害支援区分の認定(以下「区分認定」という)を受ける必要がある。障害者から申請を受けた市町村は、区分認定の流れの中で「医師の意見を聴くこと」とされており、申請者に主治医がいる場合には、主治医がその意見を記載することが定められている。
 医師意見書は、区分認定の過程で、市町村が一次判定(コンピュータ判定)を行う際および市町村審査会が二次判定を行う際に、「認定調査項目」「特記事項」とともに検討対象となる。
 市町村審査会では、医療関係者以外の委員も含まれているため、なるべく難解な専門用語を用いることを避け、平易で分かりやすい記載に努めていただきたい。

中尾正俊副会長があいさつ
地域社会における共生の実現を目指す

 平成18年4月に障害者自立支援法が施行され、身体・知的・精神の3障害が共通の制度で運用されるようになった。また、25年4月には障害者総合支援法が施行され、制度の谷間であった難病等の方々も障害福祉サービスの対象に加えられた。更に、28年4月に障害者差別解消法の施行、同年6月には障害者総合支援法と児童福祉法の一部改正法の成立があり、地域社会における共生の実現に向けて、生活・就労に関する支援の充実などが図られている。そして、医療的ケアが必要な子ども達に対しても必要なサービスの提供が行われるよう体制の整備が進んでいる。
 また、医師意見書に関しては、障害者総合支援法の施行により、「障害程度区分」が「障害支援区分」に改められ、介護給付費の支給決定に知的・精神など多様な障害の特性、その他の心身の状態に応じて支援の度合いが総合的に反映されるようになった。医師意見書は、区分認定のプロセスにおいて非常に重要な役割を果たしており、これによって利用できるサービスが決定する。本説明会が、障害者施策の理解と医師意見書作成の一助となれば幸いである。