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府医ニュース

2019年2月20日 第2883号

 ◆氷河期が終わり、温暖で豊かな自然が現れた頃、日本列島に住む人々は定住し、ムラを作った。狩猟・漁・採集によって、安定した生活を1万年以上続けた。縄文人である。
 ◆貝塚から発掘された縄文人の歯から分離したDNAの最新のゲノム解析が新しい知見を示した。縄文人は従来考えられたより古くにアジア人集団から孤立し、独自の歩みを進めた。東アジア人の起源に最も近いという。
 ◆縄文後の大陸人の流入の結果、アイヌや琉球の人以外では少なくなっているが、すべての日本人集団のゲノムには、大陸人にはない縄文人のゲノムが残されている。縄文人は日本人共通の祖先であり、固有な形質の礎となっているといえる。
 ◆人の起源以来、ゲノムは交配があっても安定して保持され、受け継がれている。人類の安定した歩みをもたらした。しかし、ゲノム編集技術が、祖先とはゲノム構成が異なる「デザイナーベビー」を生み出してしまった。いかなる目的を挙げようとも、越えてはならない一線である。危惧が広がった。(翔)