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時事

看取りの質を高められるか

府医ニュース

2018年12月5日 第2876号

多死社会に向けた体制構築が急務

 年間死亡者数は2015年に129万人を超え、最も多い2040年には167万人にまで増え続けると推計されている。2015年の死亡者の76.6%は医療機関内での死亡とされており、現在の診療提供体制のままでは今後対応しきれなくなることが危惧されている。厚生労働省の「終末期医療に関する調査」によると、「自宅で最期まで療養したい」と答えた国民は約1割に留まった。「自宅で療養して、必要になればそれまでの医療機関に入院したい」「自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい」という回答も合わせると、約6割が自宅での療養を希望したが、看取りの場所は自宅以外を選択したいと考えている国民が多い現実も示された。
 厚労省は2018年4月に始まった第7次医療計画においても、「訪問診療を実施する診療所・病院数」の具体的な数値目標とその達成に向けた施策を原則、都道府県に示すよう求めるとともに、看取り件数についても数値目標を記載することとした。
 一方、2018年度同時改定においても看取りに関する見直しの方向性が3つ示された。すなわち、①報酬引き上げや要件見直しによる担い手の拡充②医療と介護の連携強化③看取り期の医療・介護提供体制の質の向上――である。
 ①の報酬引き上げや要件見直しに関しては、訪問診療料の加算である在宅ターミナルケア加算が500点引き上げられた。機能強化型在宅療養支援診療所・病院においては、施設基準である過去1年間の在宅看取り数にあらかじめ聴取した患者や家族の意向に基づき、自院または連携医療機関に入院し、7日以内に死亡した場合も実績として算定可能となった。
 更に、状態変化による緊急往診が生じやすい終末期の患者への対応を評価して、緊急往診加算の算定対象に「医学的に終末期であると考えられる患者」が追加された。
 また、特別養護老人ホームでの看取りを進める観点から、施設側が介護施設の看取り介護加算等を取った場合も、外部の医療機関が医療保険の在宅ターミナルケア加算などを算定することを可能とした。
 以上は医療保険における改定であるが、介護保険においても報酬の引き上げや、多職種連携強化を促進する方針が示され、看取り期の医療・介護提供体制の質の向上を目指す施策が示された。
 しかし、在宅での看取りは厚労省の計画通りには進んでいないのが現状であり、チーム医療体制の構築、診療報酬の改定や保険審査の適正化等に果たす医師会の役割は重大である。(中)