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時の話題

控除対象外消費税の補填不足

府医ニュース

2018年12月5日 第2876号

10%増税時には新たな仕組みが求められる

 消費税は、消費一般に広く公平に課税される間接税であり、「商品やサービスの最終的な消費者が負担するもの」とされている。事業者は、売上に係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除し、差額を納付するものであるため、消費税は本来的に事業者にとって実質的な負担となるものではない。一方、公的医療保険でカバーされる医療(社会保険診療)は、非課税かつ公定価格であり、医療機関等が社会保険診療を提供する際に患者から仕入れに係る消費税負担を転嫁できない。
 そのため、平成元年・9年・26年の消費税導入・引き上げ時において、診療報酬や薬価等の改定を行い、医療機関等が仕入れに際して支払う消費税に応じた診療報酬への上乗せ措置が行われてきた。9年度の消費税率の3%から5%へのアップ時は、一部の個別の診療報酬に上乗せする形で補填が行われたが、26年改定時には、初・再診料や入院基本料などの基本料に上乗せする形で、幅広い補填がなされた。
 今回、7月25日に行われた中医協・医療機関等における消費税負担に関する分科会で、控除対象外消費税に対する診療報酬の補填において、大幅な不足があることが明らかとなった。これまで、病院類型等によりばらつきはあるものの、全体の補填率は100%以上とされていた。同分科会では、5%から8%への引き上げに伴う補填が十分であったかを検証してきたが、27年11月に示された26年度調査での補填率は、全体で102.07%と100%を超え、病院は102.36%、診療所は106.6%、保険薬局は88.6%であった。今回、その結果が修正され、26年度のサンプル調査では、全体で90.6%、病院は82.9%、診療所は106.6%、保険薬局は88.6%であった。更に28年度のサンプル調査でも同様の結果であり、これまで4年以上補填不足の状態が放置され、30年度改定等でも対応されなかったことが分かった。
 控除対象外消費税については、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、四病院団体協議会が、税制改正要望の中でその解決策として非課税還付方式の導入を要望してきたが、財政当局から仕入れ税額を控除し、還付を受けることが認められるのは課税に限ってのことであるため、消費税の基本的な仕組みとしては相容れないとの指摘を受けてきた。
 現在、日医は改めて四病協等の医療系団体と協議を重ね、診療報酬への補填の仕組みを維持した上で、個別の医療機関等ごとに診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額と個別の医療機関等が負担した控除対象外仕入れ税額を比較し、申告により補填の過不足に対応することを提言している。来年10月に予定されている10%への増税時には、診療報酬上での補填のみでなく、新たな仕組みによる個別の特性に応じた対応が求められる。