TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

第42回府医 医学会総会

府医ニュース

2018年12月5日 第2876号

会員が日頃の研究成果を発表

 大阪府医師会は11月11日、平成30年度(第42回)府医医学会総会を府医会館で開催。パネル展示による一般演題発表や特別講演を行った。あわせて、第50回医療近代化シンポジウムを実施し、「ロコモティブシンドローム」をテーマに3人が講演した。

 演題パネルを用いた発表は、①内科的疾患、呼吸器、感染症、内分泌、小児②学校保健、産科婦人科、外科、耳鼻咽喉科、眼科等③泌尿器科、透析、救急医療、在宅医療、医療情報システム④地域医療一般、産業保健等――に分かれて実施。会員が日常診療での留意点や症例の報告、医師会・医会の取り組みなどを説示した。いずれも興味深い話題が並び、発表者と聴講者の白熱した論議が交わされた。茂松茂人会長も会場を訪れ、その様子を見守った。
 午後からは、星賀正明理事が司会を務め、医学会評議員会を開いた。茂松会長は冒頭のあいさつで、医学会総会の開催に謝辞を述べるとともに、本総会が医学の向上、地域医療の発展に寄与すればと期待を寄せた。次いで、荻原俊男氏(府医医学会副会長/森ノ宮医療大学長)が30年度の学術研修活動として、医学会が企画した「学術講演会」や、日本生命病院を視察した「現地セミナー」などを報告した。また、本年度の『大阪医学』府医会長賞については、昨年に引き続き「厳正な審査の結果、該当者なしと決定された」と言及。評議員らへ積極的に論文投稿を促すよう呼びかけた。続いて、福田正博氏(府医生涯教育推進委員会委員長)が、生涯教育関係事項として、「府医生涯研修システム」「日医生涯教育制度」などを詳説した。
 特別講演では、高井康之副会長が座長を務め、本年度の府医医学教育功労者として表彰された黒岩敏彦氏(大阪医科大学脳神経外科学教室教授)が登壇。「悪性腫瘍の克服に向けて」と題して、自身の研究や脳腫瘍治療の動向を解説した。はじめに膠芽腫は予後不良の疾患であり、「手術摘出と化学療法が基本」と説明。黒岩氏らは手術に関して、▽腫瘍摘出範囲を明示するマーカー(フェンスポスト)の開発▽光線力学診断を臨床へ導入▽術後補助療法としてホウ素中性子補足療法(BNCT)を実施――に取り組んだとし、「膠芽腫の摘出率は従来に比して格段に上昇した」と述べた。以後、小型の加速器BNCTシステムが開発され、30年に大阪医科大学内に「関西BNCT共同医療センター」を開設。共同利用施設として治療にあたっていると加えた。

第50回医療近代化シンポジウム 「ロコモ」3氏が講演

 第50回となる医療近代化シンポジウムでは、「ロコモティブシンドローム」を取り上げた。荻原・福田両氏が座長を務め、最初に、ロコモチャレンジ!推進協議会委員長の大江隆史氏(NTT東日本関東病院院長補佐・整形外科部長)が「中年層に向けたロコモ啓発のために――ロコモ度テストの性・年代別平均値調査」と題して講演した。まず、ロコモの認知度について、若年層への啓発が課題と指摘。ロコモ度テストの結果を集約し、性・年代別に基準値を伝えることで関心を高めたいとの考えを示した。
 大阪臨床整形外科医会長の増田博氏は、同会のロコモ普及への取り組みを報告。運動器の重要性を啓発する新聞記事の掲載、市民向けイベントなどを紹介した。また、ロコトレを指導・実践する「ロコモ・コーディネーター」を全国ストップ・ザ・ロコモ協議会が養成しており、医会も協力して資格継続のための研修会を実施したと述べた。
 最後に近畿大学医学部リハビリテーション医学教授の福田寛二氏が「変形性関節症の最近の話題」として、グルコサミンの除痛効果は運動療法に及ばないことや、安易な人工膝関節置換術による疼痛残存などを指摘。整形外科医による適切な治療で健康寿命延伸につなげたいとまとめた。