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時事

貧困ビジネスの舞台は減らせられるか

府医ニュース

2018年11月21日 第2874号

改正法施行に向け、厚労省検討会が始動

 11月5日、厚生労働省の「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会」第1回の会合が開催された。
 6月8日公布の「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」に関し、既に生活保護制度における大学等への進学支援(進学準備給付金の給付)は公布日から、医療扶助費の適正化(1.健康管理支援事業の創設2.医師が医学的知見から問題ないと判断した場合の後発医薬品使用の原則化)は10月1日から施行されており、子どもの学習・生活支援事業が来年4月1日からの施行となっている。本検討会は、2020年4月1日に施行される、貧困ビジネス対策と単独での居住が困難な方への生活支援に向けての準備のために設置された。
 無料低額宿泊所は、第2種社会福祉事業のうち「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」として開設された施設であり、通知に基づく技術的助言との位置付けで、設備や運営に関する基準(原則として個室、居室床面積4・95平方㍍≒3畳以上など)や、費用に関する指針が定められている。
 これまでの議論で、中には、いわゆる"貧困ビジネス"といわれる悪質な事業者がある一方で、様々な生活支援に熱心に取り組んでいる事業者も存在することから、悪質な事業者を規制しつつ、良質な事業者が活動しやすい環境づくりの必要性が指摘されていた。支援や見守りまでは不要な安価な家賃の住宅や、施設ほどではない支援や見守りのある住宅は、低価格と基準遵守が両立しにくく、整備も頭打ちで、市場的には供給が乏しいゾーンとされている。
 平成27年6月の調査では、全入所者数1万5600人のうち91%を生活保護受給者が占め、86%の施設で、食費やその他の費用を徴収された上で本人の手元に残る保護費が3万円未満となっており、曖昧な名目での徴収や、サービス内容に比べて高額と思われる金額設定をしている施設も存在するとされている。
 今回の制度改正では、貧困ビジネス規制のための法令上の規制強化として、1.無料低額宿泊事業に新たに事前届出制を導入2.設備・運営に関して法定の最低基準を創設3.最低基準を満たさない事業所に対する改善命令の創設――が行われ、また、単独での居住が困難な生活保護受給者に対する日常生活上の支援の実施を、福祉事務所が、良質なサービスの基準を満たす無料低額宿泊所等に委託することが可能となった。
 今後、▽無料低額宿泊事業の範囲▽施設管理者や最低限の設備の要件▽サービスの水準▽運営や防災の規定▽委託の手続きや支給方法――などが検討課題として挙げられている。
 近年、生活保護の被保護人員は、65歳以上の伸びが大きく47・4%となっており、中でも高齢単身者世帯の増加が指摘されている。医療や介護とのつながりも深く、良質な提供者を守るためにも、貧困ビジネス対策は極めて重要である。(学)