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医師・医療関係者のみなさまへ

近医連総会 分科会報告(概要)

府医ニュース

2018年10月3日 第2870号

第1分科会/医療保険・介護保険
基本診療料の積み上げがかかりつけ医機能の評価に

 第1分科会(医療保険・介護保険)では、総会提示の決議案協議をはじめ、1.平成30年度診療報酬・介護報酬改定に関する評価2.同時改定における医療介護連携の評価――について協議が行われた。
 城守国斗・日本医師会常任理事は、30年度診療報酬改定時の附帯決議に触れたほか、中医協で初の試みとして改定概要の基本認識が共有されたと説明。一方、控除対象外消費税問題を巡り、先に厚生労働省が診療報酬上での補填不足を認めたことから、日医として原因究明を含む抗議文を提出したと述べた。更には8月29日、三師会と4病院団体協議会による要望を公表したと報告。実額計算により消費税相当額の補填過不足が生じた際、申告時に対応する方針で税制大綱協議に臨むとし、協力が求められた。
 入院基本料の再編・統合の評価には、概ね賛同する意見が多かったが、急性期病院からランクダウンする病院はほぼないことが示された。一方で、医療・看護必要度の測定評価に伴う負担増、次回診療報酬改定での締め付けなどに対する憂慮がみられた。地域包括診療加算・診療料の要件見直しや機能強化加算・妊婦加算の新設では、中医協診療側委員の努力を評価するものの、医療機関の特性も加味すれば基本診療料本体での積み上げが重要であり、かかりつけ医機能の評価に通じるとの声が聞かれた。
 オンライン診療料については、医療保険による離島・へき地での実施と都市部とでは事情が異なり、丁寧な施設要件・報酬設定が必要とされた。このほか、企業宣伝やマスコミ報道に対する適切な医師会からの情報発信の重要性が述べられた。最後に、「改定ごとに要件が増え、自身の診療形態に沿った算定項目・届出要否が分からず、結果的に誤算定とならないか憂慮される」「在宅医療専門医療機関としての企業論理を排除する制限は理解するが、地道な取り組みを阻害する側面も否めない」などの意見が出された。
 主務地提案の決議案に対し、「社会経済情勢の変化」の捉え方に疑義が呈された。茂松茂人・大阪府医師会長は決議案の内容について、就労者の大多数を占める中小企業を念頭に、業績が伸び悩み賃金も上がらない現状を踏まえたものと捉えていると指摘。主務地提案どおり総会上程が承認された。

第2分科会/地域医療
在宅医療の普及・推進医療的ケア児への拡大など協議

 第2分科会(地域医療)では、1.在宅医を増やすための取り組みや病診連携のバックアップ体制等2.グループ診療への助成3.小児在宅医療4.認知症サポート医名簿の取り扱い――に関して協議した。
 冒頭、在宅医を増やすための取り組みについて、事前アンケートを基に各医師会が報告。各種研修会の動向や同行研修の実施状況などが示された。大阪府医師会からは前川たかし理事が、「在宅医療推進事業」として、郡市区医師会に地域医療連携室を設置し、在宅医療推進コーディネータを養成した旨を説明。この中で、地域の医療資源を把握し、退院後の在宅医療への円滑な移行、急変時対応などの医療提供体制構築を目指したと述べた。更に、同行訪問の事例として、堺市および東大阪市でモデル的に実施された「小児在宅医療同行訪問研修」の概要を詳しく紹介した。
 また、平成16年に「小児の医療的ケア検討委員会」を設置し、小児の在宅医療普及・推進に向けた様々な取り組みを行っていると報告。今年度は大阪府において「医療依存度の高い重症心身障がい児者等支援会議」が立ち上げられ、府医も積極的に参加していると加えた。そのほか、認知症サポート医に関しては、名簿の取り扱いを中心に意見を交換。大阪では行政が管理し、府医と共有しているとの説明がなされた。
 続いて、江澤和彦・日本医師会常任理事が、在宅医療に関連した中央情勢と日医の取り組みを説明。かかりつけ医機能の向上の視点から各種研修会等を実施しているとの報告があった。また、医療的ケアが必要な児童が増加していることから、「小児在宅ケア検討委員会」で課題等を抽出したと言及。医師会の関与が少ないことが示唆されたとして、改善に取り組みたいと語った。

第3分科会/生涯教育
新専門医制度と医師の偏在生涯教育の充実など協議

 第3分科会(生涯教育)では、1.新専門医制度と医師の偏在2.高齢社会に対応していく生涯教育――について討議。まず、各府県における新専門医制度を巡る現状に関して、事前アンケートの結果を基に各医師会より報告がなされた。各府県が設置する協議会における検討内容のほか、近畿圏内の大都市および各府県内の都市部・郡部等での医師数の状況、制度の問題点などが示された。大阪府医師会からは中尾正俊副会長が、大阪市内や北摂地域に医師が集中している状況を提示。勤務地誘導等の対策や地域偏在・診療科偏在の是正、募集定員の確保など、協議会での議論の必要性に言及した。また、宮川松剛理事は、本制度の本来の目的は医師としての知識・技術の養成であると強調。偏在解消のみを目的とすることのないよう注意を促した。
 羽鳥裕・日本医師会常任理事は、医師偏在対策施行スケジュールや主な改正内容を紹介。また、地域医療対策協議会について、参画する委員の意見が反映され、積極的な議論が展開されるよう、役割の明確化・協議プロセスの透明化が進められているとした。更に、医療法及び医師法の一部を改正する法律の概要を詳説した。
 日医かかりつけ医機能研修制度応用研修会では、各医師会とも第2期制度に対する評価は良好との報告がなされた。一方、今後の活用に向けて、▽地域包括診療加算・地域包括診療料に係るかかりつけ医研修会との一本化▽日医主催のテレビ会議中継の郡部など複数個所への直接配信▽実地研修の評価の充実――などが要望された。ま:た、かかりつけ医が行う認知症診断の際の課題や、道路交通法改正に伴う関係機関等との調整、認知症関連研修会の実施状況等を報告。松原謙二・日医副会長は、認知症診断の際には、完全な診断書の作成に限らず、まずはかかりつけ医と家族で相談し、状況をみながら自主返納を促すことも重要であると述べた。