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医師・医療関係者のみなさまへ

災害医療含め一層の充実図る

府医ニュース

2018年9月26日 第2869号

「救急医療週間」行事

 9月9日の「救急の日」および同日を含む「救急医療週間」は昭和57年、厚生省(当時)により定められ、各地で関連行事が実施されている。大阪では9月13日午後、「平成30年度『救急医療週間』行事」が大阪府医師会館で開催され、約170人が参集した。

救急医療功労者(団体)を表彰

 救急医療功労者(団体)表彰式典は、大阪府・大阪市・大阪府下消防長会・府医の主催で挙行。主催者を代表してあいさつを述べた茂松茂人会長は、救急医療の現場で尽力する関係者に改めて感謝の意を表した。また近年、地震や豪雨、台風など、自然災害が頻発する状況を憂慮。府民の健康を守る上でも、病床数に余裕のある医療体制が求められるとした。あわせて、大阪の救急・災害医療体制の一層の発展に期待を込めた。
 続いて、多年にわたり救急傷病者の受け入れや搬送業務に携わってきた個人・団体に対し、主催団体より表彰状・感謝状が贈呈された(別掲参照)。今年度は、7月の西日本豪雨災害において、「JMAT大阪」として岡山県倉敷市真備町で医療支援活動を展開した3団体も顕彰。更に、司会の鍬方安行理事より、30年度救急医療功労者厚生労働大臣表彰受賞者(原孝彦氏/医療法人河内友紘会河内総合病院理事長)および救急功労者総務大臣表彰受賞者(嶋津岳士氏/大阪大学大学院医学系研究科教授)が紹介された。
 来賓として出席した塚原太郎・近畿厚生局長は、度重なる災害の犠牲者と被災者に向け、哀悼とお見舞いの言葉を述べ、医療・消防関係者の献身的な努力に敬意を表明。救急医療体制の充実に更なる協力を要請した。最後に、被表彰者を代表して松岡哲也氏(大阪府知事表彰)が登壇。高齢化の進展など、救急医療を取り巻く変化への対応を考えていかなければならないとした。また、府民の安全を確保するため、災害時の連携に精励していくと誓った。

救急災害医療研修会 検案をテーマに研修

 引き続き、救急災害医療研修会(府医主催)が実施された。鍬方理事が座長を務め、「検案」をテーマに開催。開会にあたり加納康至副会長は、大規模災害や多死社会の到来などを踏まえ、府医でも検案体制の充実を図っていくとした。
 はじめに、今年度の救急医療功労者(大阪市長感謝状受賞者)の藤見聡氏(大阪急性期・総合医療センター)が、「当センターにおける死亡診断の現状と課題」と題して講演を行った。この中で、検案業務の負担軽減を目的に、昨年8月からセンター来院時心肺停止(CPA)患者の死亡診断書作成に努めた結果、作成率は12%から46%にまで上昇したと報告した。藤見氏は、死後診察により臨床現場で死亡診断書は作成でき、また、目撃者や受診歴、心拍再開後の精査所見があればより精緻な記載が可能と述べた。一方で、解剖を要する症例もあることや、診療報酬上の課題などにも言及した。
 続いて、「救急医療と死因究明診断」として、大阪府監察医・警察医などを務める河野朗久氏(医療法人河野外科医院)が登壇。河野氏は、死因診断にかかる法的根拠を示した上で、▽医師であれば誰もが検案が可能であること▽検案時の異状とは「外表異状」であり、その有無を判断するのは医師であること――などを詳細に解説した。更に、救急医療で得られたデータがあれば、正しい死因診断にたどりつきやすいと指摘。検案にかかるデータ開示は、刑法134条(秘密漏泄罪)に抵触しないと強調し、できるだけ監察医・警察医へ提供してほしいと依頼した。最後に、自身も携わった東日本大震災における宮城県での検案活動を紹介。検案は救急・災害医療の一環であるとまとめた。

救急医療功労個人・団体
大阪府知事表彰

〇地方独立行政法人りんくう総合医療センター副院長兼救急診療部長 松岡 哲也
〇地方独立行政法人大阪市民病院機構大阪市立総合医療センター新生児科主任部長兼総合周産期母子医療センター長
市場 博幸
〇地方独立行政法人りんくう総合医療センター看護師長 藤原 由子
○一般社団法人大阪府薬剤師会常務理事
近藤直緒美

大阪市長感謝状贈呈

〇地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター救急診療科主任部長 藤見  聡

大阪府下消防長会会長感謝状贈呈

〇近畿大学医学部救急医学教室教授/近畿大学医学部附属病院救命救急センター長
北澤 康秀

大阪府医師会長表彰(個人・医療関係)

〇社会医療法人愛仁会高槻病院小児周産期系統括部長 南  宏尚
〇社会福祉法人石井記念愛染園附属愛染橋病院産婦人科部長 早田 憲司
〇社会医療法人愛仁会千船病院副院長
向井 友一郎

(団体)

〇社会医療法人弘道会
〇株式会社互恵会大阪回生病院
○大阪医科大学附属病院

(個人・消防関係)

〇大阪市消防局消防司令 井出 嘉男
〇柏原羽曳野藤井寺消防組合消防本部消防司令 窪田 幸宏
〇枚方寝屋川消防組合消防本部消防司令補

林  泰弘

〇堺市消防局消防司令 櫻本 光則
〇豊中市消防局消防司令補 平野彦志郎

厚生労働大臣表彰

○医療法人河内友紘会河内総合病院理事長
原  孝彦

総務大臣表彰

○大阪大学大学院医学系研究科教授
嶋津 岳士

(個人の敬称略)