TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

ミミズクの小窓

運動の効果を左右する"マインドセット"

府医ニュース

2017年11月29日 第2839号

 "All it takes is faith and trust"……。1953年のディズニー不朽のアニメ『Peter Pan』の中のセリフである。そう、「ただ信じること、それだけが大事なのだ」……。な~んて甘っちょろいことを信じるミミズクではない。とはいえ、この"信じること"、一概にバカにできないのかも知れない。
 昨今、運動不足・身体不活動は深刻な健康問題となっており、全世界の死亡の何と10分の1が説明できるという。非感染性疾患における主要な危険因子であることは疑いない(Lancet 380:219,2012)。だが、2015年の米国での全国問診健康調査によると成人の79%が運動の適正基準を満たしていなかった。日本においても五十歩百歩であろう。
 WHOの推計によれば12年から30年の間に非感染性疾患による死亡は、全世界で年間3800万人から5200万人にまで増加するという。もはや猶予はない。ここは運動の有用性について一大キャンペーンを張って、ひとりでも多くの人により良き運動習慣を定着させることが急務であろう……。ところが最近、ただ運動さえすれば良い、というものではないという研究がスタンフォード大学から発表された(Health Psychol Jul 20,2017)。
 では何が必要なのか。著者らは、「それは自らの運動という生活習慣に対する見方であり、考え方(perception, mindset)である」と言う。彼らの研究は成人6万1141人を21年間追跡したものである。その結果は、「自分は同年齢の人に比べて運動不足だと考えている人」は「自分は同年齢の人に比べて活動的だと考えている人」に比べ、実際には同程度の運動を行っていたとしても、追跡期間中に死亡する可能性が71%高かった、というものであった。

 正直、「本当か?!」と思わないではない。本当なら"見方・考え方、恐るべし"である。著者らは「正しい生活態度」をとるとともに、その行動に対しての「正しい見方・考え方」を兼ね備える必要があると説く。すなわち「善を為す」と「善を為すという確信を持つ」とは違う、というのだ。
 そこで生活習慣として運動を励行している人達に提案がある。毎日起床時に鏡を見ながら「私は、他人より活動的な生活を送っているぞ、オー!」とひとり"シュプレヒコール"を上げることを勧めたい。ただしあまり大声でやると、そのうちご家族の貴兄姉を見る目が違ってくるので注意が必要である。