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医療問題研究委員会

府医ニュース

2017年1月18日 第2808号

再生医療の役割を澤副会長が講演

 大阪府医師会は平成28年11月9日午後、28年度第3回医療問題研究委員会を開催。澤芳樹副会長(大阪大学大学院医学系研究科長・医学部長)が、「医療のFuturability――再生医療が果たす役割」と題して講演した。
 冒頭、澤副会長は今年度の日本医師会医学賞を受賞し、28年11月1日に表彰式に臨んだと報告。改めて謝意を表明した。
 講演では、はじめに阪大医学部の歴史を述べた。近代医学の祖である緒方洪庵の「適塾」、洪庵の息子・惟準が院長を務めた大阪仮病院、適塾の塾生による大阪医学校に源流があると振り返った。我が国初の心臓手術は心外傷によるもので、当時は榊原亨氏による圧迫止血(昭和11年)と小沢凱夫・大阪帝国大教授の縫合止血(12年)との間で大論争があったと言及。31年には曲直部壽夫・阪大教授が人工心肺による手術を初めて成功させたほか、臓器移植での先駆的な役割など、心臓外科分野における阪大の功績に胸を張った。
 澤副会長は、我が国の心不全患者が100万人規模と推計される現在、「より低侵襲な手術」「重症心不全の克服」が求められるとした。前者では、ロボット心臓手術やハイブリッド手術の更なる進展を見通した。一方で、重症心不全への対応を巡っては、補助人工心臓が心筋そのものの機能回復には至らない点や、ドナーの不足といった心臓移植の現状などを指摘。その上で、患者本人の心臓を生かしつつQOLを高めるため、再生医療の有効性を提示。自身が中心となり研究・開発に携わった「ハートシート」について詳細に説明した。患者の大腿部から筋肉組織を採取し、筋芽細胞を培養してシート化したものを心臓表面に移植することで、自己修復機能を有さない心臓の症状改善に寄与するとした。
 また、再生医療分野の法整備等が進み、「再生医療等製品の早期実用化に対応した承認制度」の条件および期限付き承認を経て、保険適用となったと報告。更なる普及に期待を込めるとともに、iPS由来心筋細胞シートの開発など、再生医療の発展に引き続き取り組むと述べた。
 講演終了後には、会場から「子どもの心筋症への使用」「薬事承認」などの質問があり、それぞれ丁寧に回答。茂松茂人会長は、澤副会長の多大な功績をたたえるとともに、今後も患者の視点に立ちながら、医療の充実に努めてほしいとエールを送った。