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抗インフルエンザ薬のスイッチ化 パブリックコメントを募集

府医ニュース

2026年3月18日 第3138号

今村英仁・日医常任理事は反対を表明

 厚生労働省は令和7年12月9日から8年1月8日まで、「抗インフルエンザ薬のスイッチ化」についてのパブリックコメントを募集した。今村英仁・日本医師会常任理事は、「抗インフルエンザ薬は、発症時期、患者の年齢や基礎疾患の有無、臨床経過などを医師が判断した上で、処方されるべき。スイッチ化により、医師の判断ではなく、自己判断での使用が広がれば、インフルエンザ以外の疾患に対する誤用や投与時期の遅れなどで効果の低下、受診遅れによる重症化リスクの増大が危惧される。また、不適切な使用は、薬剤耐性ウイルスの出現リスクにつながり、社会全体の感染症対策上の大きな脅威になる」と反対の考えを述べた。
 現在日本で使用されている抗インフルエンザ薬は、タミフル(オセルタミビル)、リレンザ(ザナミビル)、イナビル(ラニナミビル)、ゾフルーザ(バロキサビル)があるが、オセルタミビルとラニナミビルのスイッチ化について、厚労省はパブリックコメントを募集。世界のタミフルの使用量は、日本が約75%を使用し、アメリカの約20%を大きくリードしている。日本では発熱してインフルエンザ様疾患にかかれば、とりあえずクリニックを受診。早期にキットで診断し、陽性であれば症状の軽重にかかわらずほぼすべてに抗インフルエンザ薬を処方する。平成21年に新型インフルエンザ(H1N1)が世界中でパンデミックを起こしたが、日本はそのような医療事情もあったため、世界で最も死亡率の低い国となり、早期発見・早期治療の重要性が認識された。欧米では、タミフルは小児や基礎疾患のある患者、高齢者、妊婦等に限定して使用する。健康な成人では使用せず、自然治癒を目指す。抗インフルエンザ薬の効果は、発熱期間の約1日の短縮、重症化予防が主である。インフルエンザ治療に必須のものでもない。
 政府は、インフルエンザやCOVID―19の診断キットを市販化しているので、抗インフルエンザ薬もスイッチ化しないと中途半端と考えていると思われる。インフルエンザに対するセルフメディケーションが完結できないことになる。耐性株の出現については、スイッチ化により加速することも否定できない中で、「インフルエンザ=抗インフルエンザ薬」の今の日本の診療事情も変えないことには、スイッチ化を否定する根拠にならない。日本国民の「ワクチン嫌い、薬好き」の国民性も変わる必要がある。また、医療機関の手を離れてサーベイランスが不明になること、新型インフルエンザが流行した時にインフルエンザ診断キットや抗インフルエンザ薬の供給問題が起こることも想定される。政策医療(感染症)として医療機関の関与を省略すべきでないと考える。