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令和7年度アルコール関連問題の早期発見・簡易介入普及研修

府医ニュース

2026年2月25日 第3136号

アルコール依存症の現状と回復に向けて

 大阪府主催による令和7年度アルコール関連問題の早期発見・簡易介入普及研修が7年12月18日午後、大阪府医師会館とウェブの併用で行われ、医療従事者や行政関係者ら約100人が参加した。大阪府では、6年3月に「第2期大阪府アルコール健康障がい対策推進計画」を策定。アルコール依存症に対応できる医療機関の裾野を広げ、身体科・精神科医療機関とアルコール専門医療機関の連携推進を目的に、本研修を開催した。

 後藤浩之理事は開会あいさつで、大阪府における推計では約22万人がアルコール依存症を疑われる一方で、専門医療機関の外来受診者は1万人未満にとどまっていると指摘。適切な医療支援に結びついていない現状を憂慮し、かかりつけ医と専門医療機関の連携や切れ目のない患者支援に向けた体制強化に向けて、引き続き尽力したいと力を込めた。

信頼関係の構築が要

 講演では、はじめに、「アルコール関連問題のある人への簡易介入マニュアルについて――断酒と減酒の考え方」と題して、和気浩三氏(新生会病院長)が登壇した。当マニュアルは、SBIRTS(①「飲酒度」を振るい分けるスクリーニング〈Screening:S〉②減酒や断酒を勧める簡易介入〈Brief Intervention:BI〉③専門治療への紹介〈Referral to Treatment:RT〉④自助グループへの紹介〈Self-help Group:S〉)に沿って記載され、早期発見・早期治療によりアルコールが及ぼす心身への影響だけでなく、家庭生活や仕事への影響の予防や解決を目的としている。
 和気氏は、アルコール関連問題を理由に年間3万5千人が亡くなり、その社会的損失は4兆1千億円に上ると報告。▽臓器疾患▽交通事故・犯罪・ドメスティックバイオレンス▽精神疾患・自殺▽家庭問題・職場問題――につながる深刻な社会問題だと警鐘を鳴らした。約54万人がアルコール依存症と診断されているが、断酒に踏み切れない背景には、「依存症ではないとの認識」「止めたい気持ちと飲みたい衝動の葛藤」があると解説。そのため、初診では、課題共有と医療者・患者間での信頼関係の構築が要であると強調した。あわせて、断酒と減酒の違いや摂取量の算出方法のほか、簡易介入マニュアルの具体的な使い方について症例を交えて解説。積極的な活用を呼びかけた。
 続いて、濵﨑正子氏(大阪断酒会)が体験談を披露した。結婚生活や闘病生活による精神的負担から、35歳で大量飲酒による不眠症とうつ病を発症。家族の支えがありながらも飲酒を止められず膵炎で入院したが、多くの人の助けを得て断酒会に参加し、断酒が決意できたと述懐した。1年後には娘と再会し、孫とも会えたことで生きる希望を感じたと明かした。

根本治療 断酒が原則

 最後に、「当院でのアルコール関連疾患入院患者への対応」について、安辰一氏(ベルランド総合病院長補佐)が講演した。アルコール性肝障害の診断と治療を概説し、飲酒を続けた場合の肝硬変5年生存率は35%となる一方、断酒により88%まで改善すると報告。専門医療機関や断酒会との連携、飲酒習慣スクリーニングの活用など、治療に向けた実践例を説示した。安氏は、根本治療には「断酒が原則」と言明し、入退院の繰り返しを防ぐため、支える側からの一層の注意と理解を求めた。