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時事

羊頭狗肉の社会保障制度改革

府医ニュース

2026年1月28日 第3133号

OTC類似薬制度見直しと国保逃れ

 OTC類似薬を巡る見直しは、近年の医療費適正化議論の中で「セルフメディケーション推進」「保険財政の持続可能性」を旗印に俎上に載ってきた。制度面での起点は、令和7年6月11日の自民・公明・維新の合意で、OTC類似薬の保険給付のあり方を「7年末までに検討し、早期に実現可能なものは8年度から実施」と政治日程に乗せたことにある。その後、社会保障審議会・医療保険部会で、単純な「保険外し」ではなく〝保険給付は残したまま別料金を上乗せする〟方向で具体化が進んだ。
 今回の骨格(7年12月25日部会資料)は、「OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が異ならない医療用医薬品」を機械的に抽出した77成分・約1100品目が対象となる。患者からは薬剤費の4分の1を『特別の料金』として全額徴収し、残り4分の3に従来の定率負担(1~3割等)を適用する。
法改正を経て8年度中の実施が想定されている。問題は、実態として薬剤費の患者負担を制度的に引き上げる仕組みである点だ。薬剤費に限れば患者負担割合は3割負担で30~47.5%、2割負担で20~40%、1割負担で10~32.5%、上昇する。患者の利用行動が変わらなくても、保険者側の支出は機械的に減り得る一方で、社会全体の支出(患者の家計支出を含む)が同程度に減るとは限らずOTC医薬品に置き換われば支出先が医療から小売に移るだけである。
 また、大きな問題点として自己判断による受診遅れや治療中断が増えれば別の医療費を誘発する。医療保険部会でも患者団体のヒアリング等を踏まえ、受診遅れが生命や予後に直結し得る点、患者が受診要否を正確に判断できない点が強く指摘されている。もちろん、子ども、がん・難病等の慢性疾患、低所得者、入院患者、医師が長期使用等を医療上必要と判断する場合など「特別の料金を求めない」配慮の方向性は示されている。
 しかし、例外設計が複雑になればなるほど運用は難しく、患者の納得感も得にくい。負担増の議論を「セルフメディケーション」の美名で包むのではなく、①対象の妥当性、②例外・上限・公費の連動、③受診確保の具体策、④現場負担の手当て――を明文化しない限り、制度は〝医療アクセスに逆風となる負担増策〟として受け止められかねない。しかも政策側の「抑制期待」は、OTC類似薬単体で約900億円と説明されており、国民医療費(48兆円規模)から見れば0.2%程度で、医療費全体を左右する規模ではない。
 おりしも7年12月10日、大阪府議会で自民党府議が、一般社団法人の理事に就任するなどの形で被用者保険(社会保険)へ切り替え、国民健康保険の負担を抑える〝スキーム〟が横行しているとして問題提起した。その後の報道と党内調査により、与党である日本維新の会において、元職を含む複数の地方議員が当該スキームを利用していたことが判明し、さらに元東京都区議がLINEグループ等で「保険料を下げられる」と利用を提案・勧誘していた事実も明らかになった。当該スキームは、制度の形式要件を利用している点で「直ちに違法と断定しにくい」とされる一方、実態のない役員就任や名目的な業務にとどまる場合には無効・違法となり得るとの指摘もあり、応能負担の制度趣旨から見れば悪質な脱法的行為との批判は免れない。
 そもそも社会保険が労使折半であるのは、雇用主が被用者の健康と就労基盤を共同で支え、その労働力から価値を得るという制度思想に立つためである。にもかかわらず、「社会保険料の負担軽減」を掲げる政党の関係者が、制度の精神を潜脱するかのような手法に関与したことは、羊頭狗肉・牛首馬肉と糾弾されるべきであり、少なくとも今後、社会保険を巡る議論に参画させるべきではない。泥棒達の作った防犯計画を、誰が受け入れるだろうか。(隆)