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府医ニュース
2025年12月17日 第3129号
ペットといえば、まず犬や猫を思い浮かべる。多くの人はこちらの愛情に何らかの形で応えてくれる知能をペットに求めているが、猿をペットとして飼う人はほとんどいない。これは診療におけるAIにも通じる。診療で行き詰まった時、AIに相談してヒントをもらえると、非常に助かることがある。一方で、疾患名はおろか、治療方針まで一気に提示されると、むしろ腹が立つことがある。AIに先回りされて、しかも必要以上の範囲まで答えを出されることに苛立ちを覚えるのは、私だけではないだろう。便利で高機能であることと、それが好かれることは別問題である。
好まれない機器は市場で支持されず、やがて自然に姿を消していく。AIも同じで、とにかく賢くする方向が、AIの正しい生き方とは限らない。例えば、自動車では、衝突回避システムやレーンキープ機能くらいまでは歓迎されるが、それ以上の高度な機能になると操作が複雑になり、多くの人は説明書を読むことすらしない。結局、車はアクセルとブレーキさえあれば走るという感覚が根底にある。
さて、本題のPhysical AIである。多くのAI開発者は生き残りをかけて、日々新しい発展の方向を模索し、アメーバのように、様々な領域へ進化の触手を伸ばしている。しかしPhysical AIは、その中でも少し違う位置付けにある。まずやらせたい機能、すなわち人間的な有限の機能が先にあり、その枠の中でAIを最大限活かすように機器を設計していく。手術支援ロボットのダビンチが日々改良されているのは身近な例だが、同様の機械操作にAIが関わる発想は、すでに日常生活の領域にも広がりつつある。中国のカンフーロボットや、米国の四足歩行ロボットなど、機械としての動きを極める方向性は、将来的に介護ロボットや配膳ロボットといった形で、我々が受け入れやすいAI技術へと発展していく可能性が高い。このように、Physical AIは何でもできる超知能ではなく、限られた用途の中で、気持ちよく付き合える相棒を目指す進化の方向なのかもしれない。(晴)