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時事
府医ニュース
2025年12月17日 第3129号
厚生労働省は8月28日に第3回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催し、本紙第3125号(令和7年11月5日付)にて「保険者・医療関係者・学識経験者」から参考人4人の意見陳述を報告した。今回は、それを受けての各委員の質問等について述べる。
佐野雅宏委員は、ほとんどの健康保険組合が恒常的に赤字基調にあり、高齢者医療費に対する拠出金が全体支出の4割以上を占め、一部の組合においては5割を超えている。高額療養費制度のあり方についても、全体見直しとあわせて検討することが重要であると考えて、康永秀生参考人と後藤悌参考人に医療保険制度全体における医療費適正化についての考えを質問した。康永参考人は、患者の自己負担はこれ以上上げようがないぐらいまで上がっている。高額療養費に関しては、一律に上げるのは難しいというのが私の意見である。ほかのアプローチを考えるべきで、患者に負担を押しつけるのではなく、価格を下げるという方向性が一つ。もう一つは、エビデンスのないlow-value careを今後減らしていくという方向性を指摘した。後藤参考人は、世界の主流は国民に平等に医療(薬剤)を提供するのであれば使用を制限するというのが現実である。このシステムを維持することで新薬を患者に届けることもできなくなっていることを理解して、薬を患者に届けるためには痛み分けをする必要があることに理解を求めた。
天野慎介委員は、まず岡敏樹・日原順二両参考人に70歳以上の高額療養費制度について何らかの対応が必要かと質問したが、見直しに関して特段の意見はなかった。康永参考人に対する「仮に高額療養費制度を見直す場合の低所得者層についての対応」の質問には、自己負担が引き上げになった場合に家計の破綻を回避する形で制度設計が必要と返答した。また、後藤参考人に対する「高額療養費制度の変更すべき点について」の質問では、月単位が不平等であれば年にするのも一つの方法であり、大きな問題なく変えることができる。一方、医師や患者が費用対効果を考えて薬を使うということはより大きな問題になる。さらに、例えば年齢・収入によって高額療養費制度の費用負担が変わる応能負担はより大きな制度設計にもなってくるので難しい問題と述べた。
大黒宏司委員は、過度な負担は国民が等しく受けるべき社会的権利としての公的保険制度の公平性を損なう可能性があると訴えた。
袖井孝子委員は、低所得層からもしっかり年金や社会保険料を取っている日本の制度に疑問を呈するとともに「low-value care」についての質問を康永参考人にしたところ、風邪に対する抗生物質投与を例に挙げて、減らすにも一筋縄ではいかない状況がlow-value careの難しいところと答えた。
村上陽子委員は康永参考人に「低価値医療のジャッジ」について質問し、後藤参考人には「患者のコスト意識」についての示唆を求めたが、大きな問題であり、難しいとの意見であった。
城守国斗委員は自己負担の側面からだけで高額療養費制度の議論をするのではなく、共助、公助、自助の3つのバランスを取った形で今後議論していかなければならないと主張した。
菊池馨実委員は、高額療養費制度はすぐに結論を出せる問題ではないので、1~2年かけて中期的な課題として、別途議論の場を設けてしっかり議論していくことを提案した。
今回で参考人からのヒアリングは終了し、次回には委員による議論が行われる。(中)