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医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース
2025年12月3日 第3128号
認知症の人と家族の会大阪府支部(代表=坂口義弘氏)は9月27日午後、北区医師会(本出肇会長)などで構成される北区認知症高齢者支援ネットワーク(通称にこりんく)・大阪府・大阪市との共催で、「認知症月間記念講演会」を同区民センターで開催。近隣住民ら約360人が参加した。
はじめに、坂口氏があいさつ。本講演会が、認知症を自分事として正しく捉える一助になればと期待を寄せた。
下坂厚氏(京都府認知症応援大使/写真家)が、「新しい認知症観――自分らしく生きていくための備え」をテーマに基調講演を実施した。下坂氏は、最初は疲労による物忘れだと認識していたが、仕事仲間の名前や通勤経路などを思い出せなくなったことで異常に気付いたと説明。怖さから受診を先延ばしにして、医師から「認知症」と告げられた時は動揺して気持ちの整理に時間を要したと振り返った。退職後は、収入や病気の進行具合など不安だけが頭に浮かび、家に引きこもることが増えていたと述懐。訪問支援員の「困ったことはないですか?」の問いに、「大丈夫です」と口が勝手に動いていたと明かした。診断後、自分はもう何もできないと誤ったイメージを持っていたところに、仕事の誘いが入った時は、また新しく働く場所を得られたことに感銘したと回顧。「認知症」というと、何もできなくなり何も分からなくなるなど、何もかもを失うような悪い想像をしがちだが、間違いだと強調した。また、周りの人が代わりに物事を進めてしまうと、本人ができることも奪いかねないと指摘。時間がかかったり、間違ったりするが、「手伝い」という形の支え方がありがたいと伝えた。下坂氏は、「せっかく認知症になったから」と語り、認知症の正しい理解を広めたいと力を込めた。
次いで、「認知症になっても希望を持って暮らすことができる」という思いを府民に発信する「おおさか希望大使」の委嘱状が交付された。
その後、島谷通敬氏(おおさか希望大使)、松田末男氏(同大使)、宇都宮真由美氏(ご家族)、津田愛氏(同区ハートフルオレンジチーム)、木本和伸氏(大阪府福祉部高齢介護室介護支援課長)、永石真知子氏(大阪市福祉局高齢者施策部認知症施策担当課長)、下坂氏がシンポジストとして登壇。認知症当事者は症状の前兆や診断後の気持ちなど、当事者ならではの視点で発言した。その上で、悲観することばかりではないとし、早期の支援窓口や医療機関への相談を呼びかけた。
最後に本出・同区会長が閉会のあいさつで、本講演会が認知症を新しく考え直す機会となったことに謝辞を述べた。