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医師・医療関係者のみなさまへ

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時事
府医ニュース
2025年11月26日 第3127号
厚生労働省は9月24日第1回「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」を開催した。2040年に向けて在宅医療需要の大幅な増加が見込まれる中、質の高い在宅医療を効率的に提供できる体制の構築に向けて医療・介護に携わる多職種団体の代表が意見を交わした。
会議の冒頭では、厚労省から2040年に至るまでの人口構造の変化と医療需要の増大に関する見通しが示され、特に85歳以上の高齢者の増加に伴い救急搬送は75%増加し、在宅医療需要は62%増加、ピーク時には年間約170万人が死亡する見込みであることが強調された。これに加え、診療所医師の承継難や医療・福祉職種の人材不足が喫緊の課題とされた。構成員からは現場の課題と具体的な提案が相次いだ。
全国老人保健施設協会の東憲太郎氏は、認知症高齢者の増加を踏まえ、急性期病院から軽度認知症の場合は地域包括ケアや回復期リハビリテーション病棟へ、中重度認知症では介護施設でのリハビリへとトリアージを進める必要性を訴えた。医療ショートの利用や介護施設での看取り体制の強化、さらに肺炎や尿路感染、心不全など適切な管理で状態悪化による入院を避けられるACSC(Ambulatory Care Sensitive Conditions)の概念を普及させることで、救急搬送が抑制できると指摘した。
全国訪問看護事業協会の中島朋子氏は、訪問看護が医療と介護の専門職との対話や調整など連携のための橋渡し機能を担うと述べた。訪問看護師数は11万人に達する一方、訪問看護師の離職率は15.8%と病院勤務よりも高く、心身の負担や教育体制の不備、給与等の処遇問題など人材確保の課題を挙げ、ICTやDXの推進による効率化、精神疾患や医療的ケア児への対応、事業所のサービス撤退の懸念に対する合併の検討など、現場の実情に即した課題を提示した。
全国在宅療養支援医協会の島田潔氏は、令和6年度診療報酬改定で新設された在宅医療情報連携加算や往診時医療情報連携加算の意義を評価しつつ、介護保険サービスと訪問診療が同時刻に重複不可であること、ショートステイ先への訪問制限、サービス担当者会議への無償参加、介護保険施設配置医の限界(処方箋料のみの算定で対応)など制度上の連携課題を述べ、オンライン診療やカンファレンスの普及促進を期待した。
日本在宅療養支援病院連絡協議会の鈴木邦彦氏は、地域包括ケアを支える中小病院の役割を強調し、市町村単位での基本医療介護提供圏域(仮称)設定の重要性を述べ、顔の見える関係の中で協議する枠組みが必要であるとした。
医療と介護の複合需要が増大する中で、現場の知見を政策に反映させることは不可欠であり、医療関係者は制度改正を待つのみならず地域での連携強化や人材育成に積極的に取り組む姿勢が求められている。(昌)