
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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調査委員会だよりNo.131
府医ニュース
2025年11月19日 第3126号
令和7年3月に実施した会員意見調査(診療所長および病院長の回答数1072件)のインターネット回答では、経営状況について約70%が厳しい現状を訴えています。新型コロナウイルス感染症が流行する前と現在の収益における変化は、全体の53.9%が減少と答え、そして患者数の減少は回答者の年齢が高いほど減少の変化を実感している結果でした。また、診療所長と病院長ともに「医業経営に対する危機意識」が高く、特に病院でより強く反映されていました。今回は、現在の経営において負担と感じる項目について考察してみました。
負担に感じる項目は「物価上昇による経費の増加」が全体の79.2%、「人件費の増加」は76.1%、「人材の確保」は53.6%、「患者数の減少」46.2%、「医療DXへの対応」38.4%、「設備投資額の増加」37.9%、「消費税」32.1%、そして「経営者の長時間労働」31.3%の順でした。特に、物価上昇による経費および人件費の増加は、あらゆる年代で上位であり、年齢別では特に30歳から59歳において特に強く感じている方が多くみられました。物価上昇は一昨年よりあらゆる分野で認められ現在もなお進行中で、それに伴い人件費の高騰も続いています。その影響は医療分野においても同じ状況を呈しています。公定価格の据え置き、診療報酬による物価上昇に対応するための補填が十分でないこと、そして、毎年の賃金の上昇等が経営面で「資金にゆとりのない世代」に反映している可能性があります。さらに、少子化による総人口における働く世代の減少もあり、以前に比べ人材確保はより困難になってきている印象です。患者数の減少も物価高騰に影響を受けたための受診控えとも考えられ、医療DXの対応も十分な補填がないまま手間だけが増えている印象です。限られた収入の中で物価の上昇を自助努力で補うことには限界があります。
今後さらに上がっていくと考えられる消費税を公的な幅広い分野での持続的な支援に活用していただくことも医療危機を回避する一つの方法ではないかと考えます。
文 橋本 亮治
(医業経営委員会委員長/摂津市)