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時事
府医ニュース
2025年11月19日 第3126号
11月5日、厚生労働省から「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の取りまとめが公表された。今後は社会保障審議会介護保険部会に報告され、制度改正に向けた議論が進められることとなる。
現在の有料老人ホーム(以下、ホーム)の課題として、①選択:住まいやサービスの種類が複雑で情報の非対称性が高い/高額手数料など入居者紹介事業の透明性への疑念、②質の確保:緊急時の対応や認知症等の専門的ケアが必要な要介護者の安全確保/併設事業者等への誘導、過剰サービス提供のおそれ、③自治体による関与:届出制の下での指導監督の限界/介護サービス利用実態の把握が困難/総量規制のため特定施設の指定を受けられないこと──を挙げ、以下の対応が必要としている。
(1)運営およびサービス提供に関し、「中重度や医療ケアを要する要介護者、認知症の人を入居対象とする場合の事前規制(登録制)および人員・施設・運営、虐待防止措置や事故報告等に関する基準の設定」「契約前の重要事項説明(要介護度や医療必要度に応じた受け入れの可否、看取り指針の策定の有無を含む)の実施や契約書の事前交付の義務付け、不当な契約解除の禁止」「入居希望者や家族、ケアマネジャー、MSW等が活用しやすい情報公表システムの構築」「一定の基準を満たした紹介事業者を優良事業者として認定する仕組み」「紹介手数料の算定方法の公表」「ホームの情報を自治体が把握できる仕組み」――など。
(2)指導監督については、▽更新制や一定の場合に更新を拒否する仕組み▽行政処分を受けた事業者で組織的関与が認められた際には一定期間、事業所開設を制限する仕組み▽経営継続が困難な見込みの事業者に対し、迅速な事業停止命令等の行政処分を可能とすること▽事業廃止や停止の場合に、運営事業者が入居者の転居支援、サービスの継続的な確保、関係機関や家族等との調整を行政と連携しながら責任を持って対応することの義務付け――など。
(3)いわゆる「囲い込み」対策では、▼ケアマネジャー(事業所)の独立性を担保する体制▼併設・隣接、もしくは同一・関連法人や提携関係のある事業所利用を契約条件とすることや家賃優遇といった条件付けを行うこと、かかりつけ医やケアマネジャー変更の強要を禁止する措置▼地域の医療・介護連携会議への参加の推奨――など。
有料老人ホームは、終の棲家としての役割も増しており、健全な発展が期待されている。民間事業者の参入を妨げるような過度な規制とならないよう留意しつつ、指導監督を行う自治体の事務負担にも配慮した、透明性の高いルールが求められるとされる。検討会では、ホームが地域と交流し、地域の中でより積極的な役割を果たすことが重要とも謳っている。地域連携の一翼を担う日が来るよう、制度改革が強力に進められることを期待したい。まっとうな運営で経営が十分に成り立つ仕組みも必要条件であろう。(学)