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医師・医療関係者のみなさまへ

大阪府下5医療団体合同記者会見

府医ニュース

2025年11月19日 第3126号

当たり前の医療を未来に 財政支援と現状への理解を訴える

 大阪府医師会は10月2日午後、府医会館で「大阪府下5医療団体合同記者会見」を開催した。府医、大阪府病院協会(大病協/木野昌也会長)、大阪府私立病院協会(私病協/加納繁照会長)、大阪府医療法人協会(医法協/馬場武彦会長)、大阪精神科病院協会(大精協/長尾喜一郎会長)が一堂に会して行う記者会見は今回が初。3部に編成された各団体からの説明の後には、メディア各社の記者との質疑応答がなされた。

(コアメッセージ)
「いつでも頼れる病院や診療所が、すぐそばにある」
それは、これからも“当たり前”のことでしょうか?
大阪の医療を守るため、私たちと一緒に考えて下さい。

プラス改定や補助金などの財政支援を求める

 会見は、「〝当たり前〟がなくなる!?――未来へつなぐ、大阪の地域医療」と題し、大阪府下5医療団体の会長が登壇。医療機関への財政支援や府民に現状への理解を求めた。阪本栄・府医副会長が司会を務め、冒頭、加納康至・府医会長が、当会見のコアメッセージを提示。その後、各会長から説明がなされた。

医療機関の経営危機 今、何が起きている?

 第1章「地域の医療を支える『担い手』の苦境」では、それぞれの団体の立場から窮状を訴えた。
 はじめに、加納・府医会長が診療所の苦境を伝えた。日本医師会総合政策研究機構が行った「令和7年診療所の緊急経営調査」の結果を基に、6年度の医療法人立の診療所においては、医業利益・経常利益ともに赤字割合が大幅に増加し、約4割が赤字という深刻な状況だと指摘。また、診療所の半数以上が認識している経営課題として、▽物価高騰・人件費上昇▽患者単価の減少▽患者減少・受診率低下――を挙げた。これらを背景に、施設設備の老朽化や廃業の検討などが進むと考察。地域医療の存続に関わる大きな問題だと苦言を呈した。

府民一人ひとりの協力 医療資源を有効に

 「未来へ向けた共創」と題した第3章では、加納・府医会長が、限りある医療資源を有効に使うために府民一人ひとりに理解・協力を呼びかけた。厚生労働省が推進する「上手な医療のかかり方」に触れ、体調に不安がある時に自身の状態に合った適切な医療を選択するための考え方だと紹介。#7119などの専用ダイヤルによる電話相談の活用や、気軽に相談できる身近なかかりつけ医を持つことを促した。
 最後に、医療はインフラであり社会的共通資本だと説示。現在受けている「当たり前」の医療を未来へつなげるためにも、医療機関に対する財政支援や適切な診療報酬改定が必須だと力を込め、府民が安心して受診できる医療機関の存続に向けて、引き続き全力で取り組んでいきたいと締めくくった。

極めて厳しい経営状況 各病院団体が訴え

 加納・私病協会長は病院の窮状を示した。病院の経営赤字は拡大し、倒産数が過去最多を更新していることに言及した。6年度の医業利益は約7割、経常利益では約6割の病院で赤字だと報告。特に、救急患者の受け入れ病院ほど赤字になる傾向が強く、極めて厳しい状況だと加えた。さらに、6年度診療報酬改定での引き上げ分(プラス0.88%)では、昨今の物価・人件費高騰に対応できず、医療機関における賃上げ率は民間企業の半分未満であることに論及。他産業への人材流出に拍車が掛かっており、経営と人材確保の二重苦が、地域医療の維持をさらに難化させていると問題視した。

自治体リーダーも認識

 続いて、木野・大病協会長が、「公立・公的病院は、さらに厳しい状況にある」と言明。全国自治体病院協会による6年度決算状況調査を用い、経常収支で86%の病院が赤字だったことを示した。また、全国知事会や指定都市市長会による要請活動を解説。ともに、診療報酬改定や補助金などによる財政支援を要望しており、都道府県や市の首長においても、医療界と同様の危機感と打開に向けた共通認識を持っていると強調した。
 長尾・大精協会長は、精神科病院も医業利益率が落ち込んでいるとし、診療材料費、委託費、給食費などに対する値上げ要求による経営の深刻さを要説。物価・賃金高に対応する余裕がないため、看護補助者などが他産業へ流出し、人材確保が困難である旨が明かされた。

公民一体の「オール大阪」で医療提供体制を構築

 第2章「迫りくる未来に向けて必要な対応」では、馬場・医法協会長が、大阪府の医療提供体制における課題を詳説。最適化に向け財源確保を求めた。
 冒頭、2040年頃にかけて全国的に高齢化が進むが、地域差が大きく、地域の実情に応じた体制構築が重要だと前置き。都市部では、生産年齢人口の減少と85歳以上の高齢者数の増加が見込まれ、高齢者救急や在宅医療の受け皿の整備が主な課題だとした。さらに、大阪では「民間病院の割合が全国に比べて高い」と述べ、救急医療など政策的医療を民間病院で担っている分野も多く、公民一体の「オール大阪」による体制構築が肝要とした。その上で、医療機関に対する財源確保が不可欠だと主張。8年度診療報酬改定における大幅なプラス改定と、改定時期を待たずに前倒した緊急的な財政支援を切望した。