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医師・医療関係者のみなさまへ

近医連定時委員総会分科会報告(概要)

府医ニュース

2025年11月5日 第3125号

第1分科会/医療保険
次期診療報酬改定を見据え協議

 第1分科会(医療保険)では、冒頭、茂松茂人・日本医師会副会長が次期の診療報酬改定について言及。日医から参画する中医協の委員も変更されるとして、本分科会での意見を中央に届けていきたいと語った。
 はじめに、決議(案)について、島欽也・和歌山県医師会理事が説明。文言を一部修正の上、定時委員総会に上程することが承認された。
 次に、「次期診療報酬改定への対応について」をテーマに協議。城守国斗・日医常任理事より中央情勢が述べられた後、各府県が発言し、▽基本診療料の大幅な引き上げ▽生活習慣病管理料の算定要件の見直し▽特定疾患療養管理料の対象疾患拡大――が共通した要望事項として挙げられた。大阪府医師会からは、永濵要理事が発言。令和6年度診療報酬改定において、処方箋料が68点から60点へと大幅に引き下げられたことを憂慮し、次期改定では元の点数に戻した上で、さらなる評価が必要と言及した。また、医薬分業を推進する院外処方への政策誘導によって、薬局での調剤報酬が増加し、調剤費に多額の医療費が使われていると説示。処方料・処方箋料の見直しを訴えた。さらに、リフィル処方は無診察投薬につながる制度であり、患者の状態確認が十分にできないにもかかわらず、急変した場合は処方した医師の責任になるなどの問題を挙げ、廃止する必要があると強調した。
 「現在の医療保険制度における不合理な点」への質問では、永濵理事が、▽子ども・子育て支援金制度の財源問題▽保険外併用療養費や選定療養の拡大▽OTC類似薬の保険適用除外による患者の自己負担の増加――を指摘。健康保険証の廃止にも触れ、政府による国民への周知が徹底されていないことを問題視し、医療従事者の負担軽減を求めた。
 意見交換では、北村良夫・府医副会長が、全国民への資格確認書交付と健康保険証の存続の必要性について発言したほか、笠原幹司・府医理事は、医療DX推進によって医療財源が民間のIT会社に流れているため、医療機関が活用できる政策が必要と説いた。

第2分科会/災害医療
災害時の医療体制を共有

 第2分科会(災害医療)では、「避難所支援の準備状況」と「JMAT派遣の体制整備」について、事前アンケートに基づき協議した。
 はじめに、特別支援学校を福祉避難所に指定する取り組みを中心に、障害のある子ども達の災害時避難に関する課題などを共有した。各府県からは、災害時の▽情報共有・横の連携▽アクセス▽人員配置▽安全な帰宅――などに課題が示された。大阪府医師会からは、森口久子理事が発言。指定へのハードルは感じないとする一方、学校側が学校医などに情報を発信していく必要性を指摘した。また、文部科学省や日本医師会が「特別支援学校を福祉避難所に指定する取り組みの推進」を発出したことで、災害時における学校の役割を公に伝えることができると評した。あわせて、地域を巻き込んだ防災教育・訓練の大切さを主張した。
 次に、非近畿圏で発生した大規模災害に対して、日医から「JMAT派遣要請」が発出された際の各府県医師会事務局の具体的対応や改善点について意見交換。今後の改善点として、事務局機能のサポートや記録などが挙げられた。鍬方安行・府医理事は、府医における方針決定の過程を概説。先遣隊派遣と並行した協力要請では、会員医師による好意的な手挙げが継続的な派遣につながっていると明かした。また、過去の災害を振り返り、DMAT(災害派遣医療チーム)のロジスティックチームとの意思疎通も図れていると説明。行政やDMATとの緊密な連携にも触れ、共通認識として知識や裾野を広げるためにも有効だと伝えた。
 最後に、細川秀一・日医常任理事が中央情勢を報告し総括した。今後起こり得る南海トラフ地震など大規模自然災害においては、JMATによる検死・検案チームが必ず求められると力を込め、警察協力部署などとの連携もこれからの協議課題の一つとしてほしいと呼びかけた。

第3分科会/産業保健
メンタルヘルス対策の充実に向けて

 第3分科会(産業保健)では、「小規模事業場における産業医活動について」「職場におけるメンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援・働き方改革について」をテーマに意見が交わされた。
 はじめに、松岡かおり・日本医師会常任理事による中央情勢報告を実施。精神障害の労災請求件数・認定件数は年々増加しており、従業員数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されたことを報告した。これに伴い、厚生労働省では「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル作成ワーキンググループ」を設置。令和7年度末のマニュアル公表に向け、今後検討を重ねていくと語った。
 続いて事前アンケートを基に、各府県から意見が述べられた。「小規模事業場における産業医活動」については、後藤浩之・大阪府医師会理事が発言。小規模事業場においては、地域産業保健センターの認知度や利用率が十分でなく、経営者への働きかけも重要と指摘したほか、阪本栄・府医副会長は、ストレスチェック実施の義務対象拡大に関して、外部機関の参入が想定されるとして、質の担保や費用の設定など国主導で考えていく必要があると言及した。
 「職場におけるメンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援・働き方改革について」では、阪本副会長が「疾患や個々の特性、事業場の事情などによって必要な対応は異なる」と前置き。疾患に応じた復職支援システムを整備していくことが理想である一方、大規模事業場以外では対応が困難であり、積極的な外部支援の活用が肝要とした。
 意見交換では、「オンライン診療による休職診断書が散見される」との報告があり、その信頼性や対応策に問題提起がなされたほか、職業紹介サービスでは「すべてオンライン対応の産業医」の求人が複数あると指摘された。松岡・日医常任理事は、日医としても情報収集に努め、対応を検討すると言明。また、主治医や産業医を含めたネットワークの構築が必要とまとめた。