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府医ニュース
2025年11月5日 第3125号
本年9月から神戸市立博物館で、阪神・淡路大震災から30年の取り組みの一つとして、「阪神・淡路大震災30年大ゴッホ展夜のカフェテラス」が開催されている。来年2月1日までの第1期では、ゴッホ36歳までの作品、来年2月6日からの第2期では、36歳から37歳までの作品が展示される予定である。作品はオランダのクレラー・ミュラー美術館所蔵のものであるが、初期の作品を中心に90点前後の油彩画の大部分が日本に来る。
しかしオランダには世界最大のファン・ゴッホ美術館があり、クレラー・ミュラーからほとんどの作品が来日しても、オランダはびくともしない。題名にもある『夜のカフェテラス』は、黄色を中心として、黒色を使わない当時では斬新な技法を使って夜を表現しており、ゴッホの心が一番充実したフランスのアルル滞在時代の作品で、誰が見ても心が和む。特に当時日本の浮世絵に傾倒していたことから、日本人にとっては親しみ深いものとなっている。しかし、この3カ月後には耳を自傷し、2年後には拳銃で自害する劇的な運命の落差が、嵐の前の静けさである。
その後のゴッホ独特の筆の跳ね方は、見ていても心は落ち着かない。イライラ感が時を超えて伝わる晩年の作風よりも、浮世絵の優しさを内包するパリ・アルル時代の作品が、ゴッホを明るい印象に留めるのである。夜のカフェテラスは、作品の中の星空が写実的で、天文学者ジャン・ピエール・ルミネによって時刻が同定されている。カフェテラスは現在も営業しており、垣間見る星座は水瓶座で、天文シミュレーションによると、時刻は1888年9月9日から14日の23時頃だそうだ。日本の研究者も妹ウィルへの手紙が9月14日の日付でカフェテラスの記載があると指摘しているが、クレラー・ミュラー美術館や出品目録では、1888年9月16日付の弟テオへの手紙を基準としており数日ずれる。オランダ国宝級(オランダには国宝の制度はない)の誇りを感じる作品である。(晴)