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医師・医療関係者のみなさまへ

令和7年度 HIV医療講習会

府医ニュース

2025年11月5日 第3125号

HIV感染症と性感染症への理解深める

 大阪府医師会はエイズ予防財団からの受託事業として、9月24日午後、府医会館でHIV医療講習会を開催。当日は、会場とウェブの併用で実施され、医療従事者ら約80人が受講した。

 開会に先立ち、笠原幹司理事があいさつ。若年層を中心としたHIVに対する正しい知識の普及・啓発の必要性に触れ、本講演が日常診療に役立てばと期待を寄せた。
 白阪琢磨氏(国立病院機構大阪医療センターHIV/AIDS先端医療開発センター特別顧問)が座長を務め、はじめに俣野哲朗氏(国立健康危機管理研究機構理事/国立感染症研究所長)が、「HIV感染症の最近の話題」をテーマに登壇。HIV-1の仕組みや国内外の感染動向、早期診断・治療の重要性などについて解説した。HIVは無症候のまま感染が拡大する「見えにくい感染症」であり、長期慢性炎症による骨粗鬆症や心血管障害といった加齢関連疾患の促進を指摘。近年研究開発が進む、潜伏感染細胞や宿主免疫に焦点を当てた治療法を例に、免疫増強療法と抗HIV薬を組み合わせた「治癒」に向けて展望を語った。また、予防的投薬やワクチン開発、厚生労働省による指針などに触れ、HIV感染拡大防止に向けた多層的な戦略が大切だと伝えた。
 次に、古林敬一氏(たによんスタートクリニック院長)が、「性感染症のトピックス」と題して講演。梅毒を中心に診療上の注意点を挙げ、中でも女性は、先天性梅毒や出生時に無症状の新生児感染に用心すべきと強調。治療開始の遅れが母子双方の予後を悪化させるため、妊婦健診などをきっかけに迅速な対応が不可欠だと訴えた。さらに、梅毒と性器ヘルペスやエムポックスなどとの鑑別には検査の活用が有効としつつ、再発例では偽陰性の可能性もあると説明。HIV対策として、無症候期の感染者を早期に発見し、拠点病院へつなぐことが求められるが、梅毒や帯状疱疹の既往、直腸からの病原体検出がその手がかりになると加えた。最後に、梅毒は「誤診の宝庫」とも言われ、全診療科で遭遇が想定されるため、定期的な抗体検査の実施が診断の鍵となると締めくくった。