
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース
2025年11月5日 第3125号
近畿医師会連合(今期委員長=平石英三・和歌山県医師会長)は9月7日、和歌山市内のホテルで令和7年度定時委員総会を開催した。午前には常任委員会のほか、「医療保険」「災害医療」「産業保健」をテーマに3分科会に分かれ、意見を交わした(分科会概要は4面に掲載)。
委員総会開会にあたり、平石委員長があいさつ。地域医療を守るためにも医師会として主張すべきことは主張していかねばならないと述べ、本総会での真摯な協議が素晴らしい方向性を見いだすことに期待を寄せた。続いて、前期主務地の安東範明・奈良県医師会長が登壇。各府県の熱意と建設的な議論により充実した1年になったと感謝を示した。
その後、7年度役員選任を報告。委員長には平石・和歌山県医師会長、副委員長に松井道宣・京都府医師会長および上林雄史郎・和歌山県医師会副会長、常任委員に八田昌樹・兵庫県医師会長と髙橋健太郎・滋賀県医師会長、監事として加納康至・大阪府医師会長と安東・奈良県医師会長が就任した。任期は8年6月30日までとなる。
松本吉郎・日本医師会長ならびに宮﨑泉・和歌山県知事、尾花正啓・和歌山市長(梅田郁人・同市健康局長代読)が来賓祝辞を述べた後、平石委員長が座長を務め、友岡俊夫・奈良県医師会副会長より6年度会務報告がなされた。議事では、増永博幸・同理事が6年度歳入歳出決算、上林副委員長より7年度事業計画、木下智弘・和歌山県医師会副会長から歳入歳出予算が提案され、いずれも賛成多数で承認された。さらに、島欽也・同理事が決議を読み上げ、大きな拍手により採択された。
特別講演では、松本・日医会長が中央情勢を報告。冒頭、社会保障が格差の是正を図っていることを若い世代に認知してもらう重要性を唱えた。消費税の減税や社会保険料の引き下げに関する議論に触れ、医療財源の不足による医療サービスの低下や、企業側が負担を軽減されても労働者に分配するとは限らないなどの懸念に論及。医療界がいかに努力しても、公定価格である診療報酬が上がらないことで、各地の医療機関が消えていく状況に対し「やり切れない思い」と述べた。あわせて、病院機能や病床数に焦点を当てた議論について、あくまでも健全な経営ができてこその話だと指摘。いかなる病院機能であっても、十分な保険料収入を得られることが大前提だと主張した。
次に、今年の医療機関経営事業者の倒産件数は、過去最多を更新するペースだと示した。また、「最低賃金」「春闘」「人事院勧告」における賃金の上げ幅を列挙し、医療機関が賃上げに対応するには、基本診療料を中心とした診療報酬の引き上げが不可欠だと強調。診療報酬の期中改定や補正予算による対応を国に強く要望していきたいとした。さらに、公定価格をしっかりと上げることで、他産業の賃金を上げる推進役になるとの考えを示した。
続いて、中央社会保険医療協議会に所属する専門分科会「入院・外来医療等の調査・評価分科会」における検討状況を説明。今後の検討課題を示しつつ、国が急性期、地域医療包括病棟、回復期リハビリテーション病棟などすべてにおいて厳しい取り扱いをしながら、地域の医療提供体制の確保を求めてくるのは「おかしな話だ」と断言。バランスの取れた議論をするとともに、精緻なデータを基に反論していきたいと力を込めた。
OTC類似薬の保険適用除外を巡っては、標準的な治療に必要な医薬品が保険適用されているからこそ日常診療が成り立っていることへの理解の低さを憂慮。国民の意識改革も行っていかねばならないとした。
そのほか、医師の高齢化や医師偏在など新たな地域医療構想に向けた課題に対する日医の主張を説示。引き続き一致団結して、財政支援の強化を働きかけていきたいと結んだ。
現在、我が国の人口は減少局面を迎えており、様々な課題が表面化している。こうした中、「骨太の方針2025」では、いわゆる「目安対応」と「物価動向・人件費アップ」を別枠としたことは評価できるものの、医療費を含む社会保障関係費の「自然増」には、人口の高齢化に加えて医療の高度化による増加分も含まれており、過度の抑制は避けなければならない。更に、近年の診療報酬改定において、中医協の権限が弱体化している。内科系医療機関を中心に大きな影響を及ぼした「生活習慣病管理料」の新たな設定は、その典型例である。
医療従事者の処遇改善を目的として、令和6年度診療報酬改定で新設されたベースアップ評価料は、配偶者控除等のいわゆる「年収の壁」に関連して算定できない診療所も多い。物価動向・人件費アップに対応するには、医療経営に平等に行き渡るよう、基本診療料の大幅なアップとバランスの取れた各種補助金の支給が不可欠である。
医療DXに関して、政府は電子カルテの普及率を2030年までに100%にするという目標を掲げているが、サイバーセキュリティ対策などの課題もある。質の高い医療とは電子カルテを使うことではなく、患者に真摯で幅広い対応をすることであり、医療DXは期限を定めて行うものではない。
各地域では新たな地域医療構想が策定されつつあり、今後ますます在宅医療が重要となるため、各医療機関、とりわけ診療所の役割や課題を早期に明確化することを強く求めたい。
更に、政府は来年度から公的医療保険料に「子ども・子育て支援金」を上乗せして徴収し、財源の確保を名目としてあらゆる手段を講じ、社会保障費抑制政策を進めようとしている。
こうした状況の下、我々は、この大きな時代の変革期の中、国民の医療を守ることに対応する観点から以下の点を政府に要望する。
記
一、「高齢化による増加分に相当する伸びに抑える」という、いわゆる「目安対応」は医療費抑制政策であり医療の進歩とのバランスを考えること
一、今日の物価高騰・人件費アップに対応するためには、幅広く対応できる基本診療料の大幅なアップを図ること
一、医療DXを推進するためには、そのメリットとデメリットを十分に検討し、患者や医療機関に不利益を被らせないようにすること
一、新たな地域医療構想において、在宅医療が重要となるが、今後の各医療機関の課題や対応を早期に明確化すること
一、子ども・子育てにかかる財源を公的医療保険に上乗せし徴収する支援金制度を廃止すること
以上、決議する。
令和7年9月7日
近畿医師会連合定時委員総会