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時事

令和7年度秋冬新型コロナワクチン定期接種開始

府医ニュース

2025年10月15日 第3123号

昨年からの変更点と課題

 9月5日第61回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会にて新型コロナワクチンの接種について協議された。前回令和6年度秋冬の定期接種の評価として国内外の複数の報告において入院予防効果・重症化予防効果等が示された。国内の報告では60歳以上において入院予防効果が63.2%(JN.1系統対応1価ワクチン未接種者と比較)であり、安全性についても新たな懸念は認められないと評価された。7年度の定期接種において使用するワクチンの抗原組成についてはWHOの推奨と同様に1価のJN.1、KP.2若しくはLP.8.1に対する抗原または7年5月現在流行しているJN.1系統変異株に対して、広汎かつ頑健な中和抗体応答または有効性が示された抗原(XEC等)を含むこととされ、ファイザー社(mRNA)、モデルナ社(mRNA)、武田薬品工業社(組み換えタンパク)がオミクロン株LP.8.1、第一三共社(mRNA)、Meiji Seikaファルマ社(自己増幅型mRNA)がオミクロン株XECの抗原組成で計5社のワクチンが薬事承認を取得している。ファイザー社、モデルナ社はプレフィルドシリンジ製剤、その他3社は2回分バイアル製剤となり利便性が増した。接種量等違いがあるため承認後の添付文書を参照し誤接種の無いよう注意を要する。定期接種対象者は昨年同様65歳以上の高齢者および60~64歳で一定基準の重症化リスクが高い者であり、実施期間は7年10月1日から8年3月31日までとされるが、自治体により1月31日まで等、実際の期間は異なる。
 9月1日には日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会が今年度の新型コロナワクチン定期接種に関して「強く推奨する」との共同見解を発表した。COVID-19による死亡数は6年も3万5865人(死因順位第8位)とインフルエンザの死亡数2855人を大きく上回り、約97%が65歳以上の高齢者である。7年も入院数は7月までに3万人を超える。オミクロン株は数カ月ごとに変異を繰り返し、免疫を回避する力が強まる。接種後の高齢者における虚血性心疾患、心筋炎、脳血管障害など29種類の重篤な有害事象の頻度は、非接種者と比べて上昇していないことが報告されている。ワクチンの発症・重症化予防効果は数カ月で減衰するため流行株に対応した新たなワクチンの追加接種が必要であり、感染したとしても3~6カ月以上経過していれば接種が望まれると伝えた。
 今年度定期接種では昨年度実施された国の8300円の助成が無くなった。各自治体による助成により患者の自己負担は3000円前後から8000円程度まで差が生じ、昨年度より負担増となるため接種率の低下につながり得る。また定期接種対象外の乳幼児・小児等の未接種者は増加し、60歳未満の基礎疾患のある方、医療従事者等への助成は無く感染拡大時の懸念となる。接種率向上のために医療者から正しい情報を伝え続けることが重要である。(昌)