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葡萄の誉

府医ニュース

2025年9月24日 第3121号

 シャインマスカットは巨峰と比較して倍の収益があると、テレビで農家の人が答えていた。最近はどこの果物売り場をみても、シャインマスカットだらけというのは、そういう背景があるのかもしれない。2006年、「ぶどう農林21号」として農林水産省管轄で育成されるも、国際出願と無断海外持ち出し禁止をしなかったため、国外に流出した。多大な損失かもしれないが、世界が認める発明品は、日本人の誇りでもある。その後、あまおう、紅はるか、ゆめぴりかなど国際出願される可能性があるそうだ。
 患者さんにぶどう農家の人がいるが、6、7月は外来を避けてほしいと言われている。首を上げて何千個ものブドウと格闘するのだそうだ。何時間も続く重労働で、農園継承の可能性には悲観的であった。収穫の時は商品に傷を付けてはいけないし、収入はその時だけという緊張感もある。高級農作物は農家の人の技術力でかなり味が向上する。少し調べてみたら、①糖度計で収穫時期を探る②pH管理、土壌管理、苗選び③果実に糖を集中させるため、枝の表皮を環状に剥離する④葉に養分を直接与える⑤粒数や房数の調整⑥光を調整⑦水分管理――などで、患者を扱うように、最高の状態に持っていくのである。このような煩雑な方法論の積み重ねは、ブランド化する要素を含んでいる。
 確かに人件費が嵩み値段は高くなるが、付加価値をライセンス料以上に積み上げていく技は、良いものを作る心意気があればこそである。以前に貰い物のシャインマスカットが冷蔵庫に入りきれなくて、1房一気に食べたことがある。こういういい加減な食べ方は、やっぱり慎んだ方が良いと反省している。(晴)