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時事
府医ニュース
2025年9月24日 第3121号
厚生労働省は6月30日に第2回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催し、本紙第3118号(令和7年8月27日付)にて4患者団体等の参考人の意見陳述を報告した。今回は、それを受けての各委員の質問等について述べる。
全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介委員は河田純一参考人に慢性骨髄性白血病(CML)で、分子標的薬の休薬可能患者がどの程度いるかを質問した。河田参考人は「深い寛解」に至った少数患者のうち薬を中断して再発する方が5割あり、限られた人数しか薬を止めることはできない。この「深い寛解」に至ることが日本で先行している理由は新薬が次々と投入され、より効果の強い薬が長期にわたって使える環境下にあったことが現状につながっている。したがって、費用対効果などを理由に新薬が新たに承認されなくなるか、経済的に優れた薬だけを使用するようになれば、薬を止めるというチャレンジに至らないことが起こり得ることを懸念していると述べた。
天野委員は次いで、10年前の高額療養費の見直しにて要望活動に関わった経緯を述べ、厚労省「がん対策推進協議会」の患者委員が「がん患者はがんとの闘いだけではなくお金との闘いを強いられている」と訴え、現物給付化を含めて患者の負担軽減を求める要望活動をされた後に逝去され、複数の患者団体で現物給付化が実現した。今回、引き上げの是非を議論しなければならないが、現状でもすでにWHOが定義する「破滅的医療支出」に相当する所得層の方がいる一方で、将来のことを考えた場合に引き上げをしなければいけないというバランスは非常に難しいと思うが、山口育子参考人に考えがあれば聞かせていただきたいと述べた。
山口参考人は、「破滅的医療支出」を受けて、長期にわたって高額な医療費が継続する方については何らかの手立てをしていく必要はあると語った。
日本難病・疾病団体協議会代表理事の大黒宏司委員は改めて現状把握が大事であり、今でも治療の中断は生じているという実例からも、まずは立ち止まって高額療養費制度下の患者の現状を見つめるべきとした。
一方、健康保険組合連合会長代理の佐野雅宏委員は、多数回該当の仕組み等、制度面での課題も指摘いただいたので、患者皆様の声に寄り添った対応を考えていく必要があるとした上で、高額療養費制度の基準の設定と見直しについても、多種多様な疾病形態がある中で、患者の一定の納得感を得ることは重要であり、保険者の立場では公平性を保つことも重要な要素と考えている。現在、保険者が持っているデータはレセプトデータがベースになっているので、一定の限界があることも理解してもらいたい。医療の高度化、高額薬剤の登場はメリットも大きいが、それが保険全体の仕組みに与える影響も大きくなっている。患者皆様と保険加入者の双方にとっていい形になる方向が見いだせればと思っているとした。
日本医師会常任理事の城守国斗委員は、昨秋、高額療養費制度の見直しが突然出てきて、自己負担の引き上げと所得区分の細分化という大きな方向性に関しては医療保険部会の中で議論したが、実際にどれぐらい上げるのか、多数回該当に対してどのような設計をするのかという詳細な議論は医療保険部会では行われていない。それは国と政府で決定されたという経緯がある。国民皆保険の基本的な考え方を国に持っていただいて、今後の議論に臨みたいと述べた。
最後に、佐藤康弘保険課長が次回もヒアリングを予定しているとの連絡をして終了した。今後は十分なデータに基づいた丁寧な議論を期待したい。
なお、第3回の委員会は8月28日に開催され、保険者および医療関係者・学識経験者からのヒアリングが行われたので、後日報告したい。(中)