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府医ニュース

2025年9月24日 第3121号

 ◆トランプ米大統領が国防総省を「戦争省」と呼ぶ大統領令に署名した。これは建国後間もない18世紀から大戦直後まで使われた呼称である。
 ◆20世紀前半までは欧米などで「戦争」を冠した名称は珍しくなかったが、米国では大戦後、「平和と安全の達成」に資する改革として、陸海空軍を統合するとともにこの呼名をやめた。現在は欧州を含め世界的に「防衛」を掲げるのが潮流だ。
 ◆ところがトランプ氏は、紛争が広がる最近の情勢を鑑み「戦争省」が適切だという。これは「力による平和」を掲げる自身の信条に沿ったものだが、この不穏な呼称は他国に脅威感を高める結果をもたらす。
 ◆米国にはベトナムやイラクなどで自らの力を過信し、無謀な戦争を重ねた過去がある。国際環境は今、当時よりもさらに不安定である。国際紛争も、国内の分断や治安の悪化も、周到な調整や対話の積み上げがなければ解決できない。
 ◆歪んだ歴史観と武力偏重に基づく「戦争」の乱用は、トランプ氏が自任する「平和の仲介」役に矛盾する極めて愚かな行為である。(浩)