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医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

2040年問題を見据えて Ⅲ

府医ニュース

2025年9月24日 第3121号

社会保障制度をいかに維持するか

 2024年から40年にかけて少子高齢化や医療の高度化がさらに進み、社会保障負担は約1.4倍の187.3兆円に上り、うち社会保険料部分は107兆円になると推計されている。それを現役世代1.5人で高齢者1人を支えることになる。現在は現役世代2人で高齢者1人を支えているので、約1.4倍の負担である。経済産業省は24年のGDP609兆円から、40年は約1.6倍の980兆円のビジョンを描いている。所得が1.6倍増加すれば、現役世代の過重な負担感は、少しは軽減されると思われる。
 総務省「家計調査」によれば、00年から22年にかけて直接税(所得税・住民税)48万円から59万円(約1.2倍)、社会保険料58万円から81万円(約1.4倍)に増加した一方、所得は675万円から741万円(約1.1倍)しか増えず、低所得者では特に過重な負担感があった。経産省はAI利用や産業のDX化などによる効率化、国内投資拡大により40年のGDP980兆円は希望的観測でないとしているがどうだろうか。
 25年現在、65歳以上の高齢者は約30%であるが、40年には約35%の超高齢社会と推定されている。公的医療保険は、国民健康保険と被用者保険(健保組合、協会けんぽ、共済組合)があり、別に後期高齢者医療制度(75歳以上)がある。前期高齢者医療は、65歳~74歳までを対象としており、国民健康保険への加入が最も多いが、被用者保険への加入者もそれぞれ少ないながらもいるので、平均的な前期加入者の比率まで、各被保険者から差額の前期高齢者納付金を交付する仕組みで財政調整する。後期高齢者医療は、現役世代の被用者保険と国民健康保険から支援金が交付されている。後期高齢者医療制度では、窓口負担を除いて、約5割が公費、約1割が保険料、そして約4割が現役世代からの支援金である。23年度健康保険組合連合会の1380組合の財政状況の推計によれば、①自分と家族の医療費:52%②後期高齢者支援金:24%③前期高齢者納付金:16%④その他:8%――となっている。つまり、高齢者医療への支援に総支出の40%を健保組合から出している。世代は交代していくとは言え、今以上の過重な負担は、現役世代の理解を得るのは困難と思われる。
 日本医療調査機構の「2025年日本の医療に関する世論調査」によれば、▽サービス大幅低下・負担も抑制:20.1%▽サービス低下・現状負担維持:23.3%▽現在のサービス水準維持・負担増加:42.4%▽イノベーション成果享受のため負担増加:14.2%――となっている。一番多いのは、「現在のサービス水準を維持するために経済的負担増加はやむなし」である。
 高額所得、金融資産等のある高齢者は、経済的負担能力に応じて保険料や窓口負担も増やしていくことが制度を維持するためには必要と考える。