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時事

電子カルテ・電子処方箋

府医ニュース

2025年9月17日 第3120号

普及に向けた現状と課題

 令和7年8月28日に開催された第196回社会保障審議会医療保険部会において電子処方箋・電子カルテの目標設定等について報告が行われた。電子処方箋は薬局での導入が急速に進み、6月時点で全薬局の8割が運用を開始しており、7年夏にはほぼ全薬局で稼働する見込みである。一方、医療機関における導入率は約1割に留まっており、普及の加速が課題となっている。電子処方箋の導入を進めるにあたり電子カルテ/共有サービスの一体的な導入が重要となり、遅くとも12年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す方針が示された。
 電子カルテの普及率は医科診療所で55%、一般病院で65%となっている。未導入の医科無床診療所向けには、国がクラウドベースの標準型電子カルテを開発中であり、7年3月よりモデル事業が実施されている。電子カルテとして導入済みの医療機関には、現在主流のオンプレミス型電子カルテ(施設内でサーバー、ネットワーク機器、ソフトウェア等管理)から、次回システム更改時に標準型電子カルテに準拠したクラウド型電子カルテへの移行を促す。未導入の医療機関では必要な支援策の具体化を検討し、▽共有サービス・電子処方箋への対応▽ガバメントクラウド対応が可能となるクラウド型サービス▽関係システムへの標準APIの搭載▽データ引き継ぎが可能な互換性の確保――などを参考にシステム費用の抑制を目指し、医科診療所向けの電子カルテの標準仕様を策定する。医薬品コードについては、現在YJコード、レセ電コード、一般名コードなど複数のコード体系が併用されているが、その関係性が整理されておらず、トラブルや現場負担の要因となっている。電子処方箋トラブルの再発防止や医薬品トレーサビリティ強化を目的に、8年度から国が各コードの関係性を明確化する対応を行う。また、ダミーコードを受け付けないよう電子処方箋管理サービスの改修も完了した。臨床検査コードについても統一が進んでおらず、システム間での情報連携が容易ではないため、今後は統一化を進め、JLAC11を厚生労働省標準規格として改善を図る方針が示された。
 電子カルテと電子処方箋の普及は、診療情報共有による重複検査や誤投薬の回避、施設間の迅速な情報提供、災害時の医療継続など、多くの利点をもたらすと考えられる。しかし、導入や改修、維持にかかる費用は特に中小規模診療所にとって大きな負担であり、補助制度や診療報酬での評価が不可欠である。既存システムや院内業務フローとの整合性確保も重要であり、移行時には業務停滞のリスクを伴う。さらに、医療従事者のITリテラシーの差が活用度に直結するため、研修やサポート体制の整備が求められる。クラウド化についてもセキュリティや、通信品質安定の問題、障害時対応等課題は多い。システムに人間が合わせざるを得ない状況を避けるためにも、簡便かつ安定したシステム構築が望まれる。また、未導入機関への配慮を欠いた拙速かつ画一的な義務化は避けるべきである。(昌)