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府医ニュース
2025年9月17日 第3120号
厚生労働省「社会保障の給付と負担の現状(2024年度予算ベース)」によると、24年の当初予算ベースで、社会保障負担は総額135.0兆円(社会保険料80.3兆円、税・赤字国債54.7兆円)に対し、40年は総額187.3兆円(社会保険料107.0兆円、税・赤字国債80.3兆円)に増加すると推計されている。
さらに、総務省統計局「家計調査」から、現役世代の社会保険料は全体の93.1%、税・赤字国債では88.8%を負担していることが分かっている。したがって、現状のままでは、24年から40年までに増加する社会保障負担52.3兆円のうち、社会保険料24.9兆円、税・赤字国債では22.7兆円が現役世代の負担増になる。上記のマクロの計算でも24年から40年までで、社会保障費の総額は単純に約1.4倍となり、それを減少した現役世代で支えることになる。つまり24年は現役世代2人で高齢者1人を支えていたのが、40年は現役世代1.5人で高齢者1人を支えることになる。これを踏まえて、「骨太の方針2025」でも「これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力を継続しつつ」との記載がある。
ところで、社会保険には、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険がある。社会保険料は社会保障給付を賄う主要財源であり、原則として被保険者と事業主(企業や個人事業主)で負担している。社会保険料の賦課対象は、主に給与や賞与であるため、現役世代の所得に偏っている。社会保険は、①国民全体の連携を可能にするため強制加入である②所得再配分による国民生活の安定に寄与する③税とは異なり負担と給付が結びついており負担に対する同意が得られやすい――といった特徴がある。③であれば、本来保険リスクの少ない現役世代は少額の保険料でよいが、実際には、保険リスクの高い後期高齢者は所得が少ないため少額の保険料となっている。そのため、公的医療保険や介護保険は、負担した保険料に対してリスクに見合った給付を受ける保険の仕組みと、世代間扶助としての所得再分配の仕組みが混在している。よって、後期高齢者医療費の負担は、窓口負担を除けば、公費約5割、後期高齢者支援金(現役世代の保険からの支援金)約4割、保険料は約1割である。
社会保険料が40年に1.4倍になっても、所得がそれ以上に増加すれば国民の負担感は軽減される。経産省は24年のGDP609兆円から、40年は約1.6倍のGDP980兆円のビジョンを示している。果たして可能であろうか……。