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医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だよりNo.128

これからの社会保障、負担と給付のバランスは?

府医ニュース

2025年9月3日 第3119号

 今回は、今後の社会保障における負担と給付について、府民調査の結果をまとめたいと思います。
 社会保障の給付について現在の水準を維持するためには負担増が必要とする意見がある一方で、特例国債(いわゆる赤字国債)を活用して負担増を抑えようという考え方もあります。今回の設問の選択肢には、その特例国債の発行により、給付水準を維持、また、引き上げを行うという項目が追加されています。
 結果の分析においては、負担に焦点を当て、給付の水準を下げたり、特例国債を発行して負担を抑えるという意見を「負担否認または維持派」とし、水準維持、もしくは引き上げのための負担増を認める意見を「負担増容認派」としました。すると、全体では、前者が44.8%、後者が24.4%となります。今回、選択肢が増加して、今後の給付と負担についての府民の意見の経年変化を見るのは難しいのですが、令和2年4月の調査では、負担増容認派は35.9%、6年4月の調査では28.7%であり、わずかに減少傾向にあることになります。また、「少子高齢化社会等アンケート調査」(厚生労働省7年2月)では、同じく前者36.2%、後者49.7%という結果で、国に比べて、大阪では、負担増に対して厳しい意見が多いことになります。
 しかし、年齢別の集計では、年代が上がるにつれて、負担増容認派が増加しており、70歳代で36.1%、80歳代で38.1%となっていて、国の結果に近くなっています。少なくとも、高齢者に関して言えば、負担増を受け入れる意見の方が多くなっているとは言えると思います。
 医療の現場では、経営が厳しいという声が上がっており、診療報酬引き上げの要望が出ています。その一方で、医療・介護費用の増加は現役世代の方々の負担増につながり、これは抑制すべきという意見も聞かれます。いずれにしても現行の負担では、これまでと同じ給付水準を維持することは困難であり、抜本的な改革に向けた議論が不可欠と思われます。

文 島田 永和(羽曳野市)