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時事

第2回 高額療養費制度の在り方に関する専門委員会

府医ニュース

2025年8月27日 第3118号

当事者の意見を聞く会議に期待

 厚生労働省は6月30日に第2回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催した。4患者団体等からの参考人が制度見直しについて意見を述べた。
 慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会副代表の河田純一参考人は、「当会は慢性骨髄性白血病(CML)の患者と家族の情報交換や治療向上のための活動を目的に設立され、高額な医療費負担の軽減、患者支援に取り組んできた。CMLはかつて『不治の病』と言われたが、2001年に分子標的薬が国内で承認され、5年生存率3割未満から10年生存率9割以上に改善し、治療を継続できれば健康な人と同じ余命が送れるようになったが、生涯にわたる服薬が前提である。分子標的薬は高額であるが、高額療養費制度の多数回該当を長期利用することにより今までは治療継続可能であった場合も、政府の当初引き上げ案では多数回該当に『ギリギリ届かない』事例を増加させる」と指摘した。また、23年に実施した調査では、治療を続けていく上で困っていることは「医療費などの金銭的な負担」が56%で最も多く、経済的困難の回答は若い世代で高かった。さらに、経済的な理由で服用中止を考えたことがある(15%)、休薬した人の中に「医師に相談せず」が9%いるとの21年調査の結果から、自己負担額引き上げによる治療中断(「静かな自殺」)の増加が強く懸念されると訴えた。最後に下記の3点を述べたが、いずれも傾聴に値する。①高額療養費制度の見直しは、長期療養者のLife(いのち、生活、人生)に直結する②「セーフティネットとしての高額療養費制度の役割」の重要性を理解し、その維持を強く望む。しかし、現行制度でも長期療養者にとって、必ずしも役割は果たされていない③所得と年齢のみを考慮した「負担能力に応じたきめ細かい制度設計」には、長期間の負担が十分に考慮されていない。
 認定NPO法人日本アレルギー友の会理事長の武川篤之参考人は、アトピー性皮膚炎について近年、生物学的製剤などの新薬の登場により大きな治療効果が上がっているが、治療薬が高額なことにより治療をためらい、新薬の恩恵が受けられない方がいるのは大変残念であるとした上で、治療継続が可能となるよう見直すこと等を要望した。
 NPO法人血液情報広場・つばさ理事長の橋本明子参考人も慢性骨髄性白血病について、治療を支援する基金を立ち上げた経験等、血液がんの領域での患者にとっての負担の大きさについて事例を交えて話した。
 認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子参考人は高額療養費制度における患者の意識の変化を指摘するとともに、10年前の見直し時から抱いていた危機感を述べた。すなわち、高額療養費制度は「患者」になれば「なくてはならない制度」であるが、▽高額薬剤の効果検証はなされているのか▽いつまで財源がもつのか――などを指摘した。そして、「突然『高額療養費制度は維持できない』と梯子を外されると治療を受けられない人が続出する。高額療養費制度というセーフティネットを維持・継続するために、医療を個人の視点だけでなく、社会を視野に入れて考える必要があるのではないか」と述べた。
 以上のヒアリング内容を十分に検討して議論することを望みたい。(中)