
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2025年8月20日 第3117号
大阪府医師会労災部会・産業医部会および労災保険情報センターが主催する「令和7年度第1回労災医療研修会」が7月2日午後、大阪市中央公会堂で開催された。当日は、府医会員をはじめ関係者など約140人が聴講した。
開会に先立ち、清水智之理事があいさつ。府医労災部会は昭和62年の発足以来、労災医療をテーマとした研修会を企画していると前置き。近年の労働災害の増加に触れ、本研修会が日常診療の一助になればと期待を寄せた。
河村禎人氏(同部会副部会長)が座長を務め、はじめに寺井秀富氏(大阪公立大学医学部整形外科学教授)が、「勤労高齢者の腰痛――診断と治療」と題して講演。慢性的な人手不足や高齢化の進行により、全国の65歳以上の就業者数が920万人を超え、特に70歳以上の労働者が年々増加している現状を報告した。70代は加齢により体幹筋量が急激に減少すると指摘し、▽姿勢の悪さ▽ADLの低下▽腰部脊柱管狭窄症▽骨粗鬆症――など腰痛の主な原因を列挙。また、高齢者の腰痛は、身体的負荷だけでなく、心理的ストレスや職場内の孤立感などの精神的要因も影響すると述べ、過度な身体的労働を避けた職務配置や健康維持を支える多面的な支援体制の整備が不可欠と伝えた。
次に、中島和江氏(大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部教授・部長/病院長補佐)が、「動的に変化する職場環境における安全マネジメント:適応キャパシティの向上」をテーマに登壇。従来の医療安全では、インシデントの原因分析と個別対策に重点を置いてきたが、今後は成功事例を基に、変化への適応力を高める安全マネジメントが求められると見通した。その上で、現場のチームや個人の能力を把握し、それぞれの適応力をしなやかに引き出す大切さを強調。①リーダーシップ②信頼関係③ICT活用――がその基盤になると力を込めた。さらに、調剤業務におけるインシデント事例を通じて、人手不足や業務中断など背景要因に対して組織的に取り組むよう推奨した。
最後に、ダーウィンの言葉「最も変化に対応できる者が生き残る」を引用。変化に柔軟な組織づくりの重要性を訴えた。