
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2025年8月20日 第3117号
福島区医師会(中島滋郎会長)は6月3日午後、同区民センターで「福島区民講座」を開催。近隣住民ら約200人が参集した。
はじめに、中島・福島区医師会長があいさつ。本講演会が認知症について理解を深める一助になればと期待を寄せた。また、工藤誠・同区長は、同医師会の活動に謝意を表し、今後も区民の健康に寄与する取り組みを進めていきたいと語った。
松下正幸・同医師会理事が座長を務め、基調講演では、櫻井孝氏(国立長寿医療研究センター研究所長)が、「MCI(軽度認知障害)ってどんな病気?上手に付き合う方法」と題して登壇した。櫻井氏は、まず新しい認知症の捉え方として「誰しもがなり得る病気」であると前置き。早期から希望を持ち、地域で安心して暮らせる環境整備が肝要であると説示した。
次いで、MCIについて、「自立生活は可能だが認知機能に障害があり、放置すれば認知症発症リスクが4~5倍に上昇する」と警鐘を鳴らした。特に日本では75歳以上の高齢者人口の多さから、今後もMCIと認知症の患者数は増加する傾向にあると分析した。さらに、認知症の主な病型として、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」が全体の85%以上を占めると指摘。アルツハイマー型認知症の原因物質として、脳内に蓄積するβアミロイドやリン酸化タウを解説したほか、新たな治療薬「レカネマブ」の登場により、早期治療が進むことに期待が寄せられていると述べた。予防については、▽高LDLコレステロール▽うつ▽喫煙――など14のリスク要因に触れ、生活習慣の改善が不可欠であると強調した。その上で、国立長寿医療研究センターが主導する「J―MINT研究」の成果を説明。①運動指導②栄養指導③認知トレーニング④生活習慣病管理――の4つから構成されるプログラムに取り組むことで、18カ月後には認知機能が改善したと報告した。
一方で、現場を取り巻く課題として指導者不足や継続的参加の困難さ、費用対効果などに言及。社会実装に向け、インストラクター育成・認証制度や事業者認定制度の整備を進めているとした。
最後に、質を担保しつつ持続可能な形で普及を目指したいと締めくくった。