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時事
府医ニュース
2025年8月6日 第3116号
新型コロナウイルスの感染拡大における国産新型コロナワクチンの不足や承認遅延、平時での百日咳流行におけるDPTワクチン逼迫、最近では破傷風トキソイドの出荷停止等、ワクチンの安定供給に関する問題が続いている。こうした状況を踏まえ4月21日、第17回新型インフルエンザ等対策推進会議が開催され、厚生労働省、内閣府、先進的研究開発戦略センター(SCARDA)等関係機関が一堂に会しワクチン開発・確保のための取り組みについて協議が行われた。厚労省からは重点感染症のワクチン開発を行う国内製薬企業に対し大規模臨床試験の実施支援、薬事承認プロセスの迅速化と基準整備の重要性が述べられた。
ワクチンの需要と供給を調整するため令和8年の稼働を目指す予診情報・予防接種記録管理/請求支払システムにおいてV―SYSの機能を代替、マイナポータルでの予診票回答等を検討中である。内閣府健康・医療戦略推進事務局は新型コロナワクチンがコロナ禍当初輸入に頼らざるを得ず、ワクチン研究開発に関する国際競争力の低下と生産能力への課題を指摘。世界トップレベルの研究開発拠点の形成のため東京大学(他分野融合研究のコア、産学連携研究)をフラッグシップ拠点とし、北海道(人獣共通感染症を中心に研究)、千葉(経鼻経口等粘膜ワクチンの開発)、大阪(mRNA、ペプチド等のモダリティによる最適なワクチン開発等)、長崎(BSL―3、4施設等の最先端機器や人的資源の統合的運用、感染症研究出島特区、熱帯感染症等)の4大学をシナジー拠点、他6機関をサポート機関として産学官連携に努め研究開発・人材育成を実施し、感染症有事に緊急的にワクチン開発を行うと伝えた。
経済産業省はワクチン製造拠点の整備を実施、平時はバイオ医薬品を製造し、感染症有事にはワクチンの製造へ切り替えられるデュアルユース設備の維持管理や人材育成に補助を行う。ワクチン生産に使用する部素材は海外輸入品が多く供給確保に不安があり、国産サプライチェーン構築も推進中である。また薬事承認プロセスの迅速化と基準整備により緊急事態の使用に備える。
SCARDAは感染症有事にワクチン開発を迅速に推進するため発生前後を通じた全体調整を担う機関である。国内外メーカーのワクチン開発承認取得状況、基礎応用研究、技術開発、感染症の発生動向等情報収集分析を行い、戦略的な意思決定に基づきワクチン・新規モダリティ研究開発に対し機動的なファンディングを行う。ワクチン研究開発の初動で重要な病原体の輸送手順等を見直し、1カ月以上要した手順を4日以内に短縮した。本会議において様々な解決策が協議・報告されたが、鶏卵や細胞でのウイルス培養を必要とし、ワクチン原液から製剤出荷まで半年から1年近くかかる不活化、生ワクチンでは予防接種記録管理システムによる接種数把握と流通、在庫量の企業政府間での情報共有による早期の増産着手等、需要供給の状況把握が不可欠であると思われた。(昌)