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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2025年8月6日 第3116号
大阪府医師会は5月17日午後、大阪産婦人科医会と共催で「令和7年度第1回周産期医療研修会」を府医会館で開催。ウェブとの併用で、産婦人科の医師ら約280人が聴講した。
2題の講演が行われ、早田憲司氏(石井記念愛染園附属愛染橋病院副院長/産婦人科部長)と吉井勝彦氏(千船病院長)が座長を務めた。
はじめに、織田順氏(大阪大学大学院医学系研究科救急医学教授/大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター長)が、「日常から深める救命救急と産科の専門連携――互いを知り、命を救う連携へ」と題して登壇した。まず、3次救急患者診療を概説。見落としやすい例を参考に、治療の優先順位や主訴に捉われて急変を招くことの危険性を伝えた。初期対応の基本として、(A)気道(B)呼吸(C)循環(D)中枢神経――の順に評価するABCDアプローチを提示した。生命の維持には、これらの安定化が最優先と強調。この概念を母体救命に応用し、組み立てられたものが「J-MELS」だと説明した。生体反応を迅速に捉え早期治療を行うことが、救命だけでなく機能回復にも有用と述べた。織田氏は、「治療の遅れを防ぐためにも早めの高次転送を」と語り、状況によってはオーバートリアージを容認する見解を示した。
次いで、金川武司氏(国立循環器病研究センター産婦人科医長)が、「大阪における最重症合併症妊産婦:OGCSの取り組みと10年間の検証」をテーマに講演。産科合併症の重篤化や産科以外の合併症により、生命の危機にある妊産婦(最重症合併症妊産婦)を高度な周産期医療と救命救急医療が連携した医療機関へ搬送する取り組みを紹介した。速やかな搬送のため、OGCS(産婦人科診療相互援助システム)への連絡を推奨し、搬送依頼は「OGCSの手引きに則って」行うよう求めた。近年、最重症合併症妊産婦の発生率は増加傾向にあると報告。主な原因である産科危機的出血を防ぐための管理も必要だが、早期に搬送する勇気と英断が重要だと力を込めた。全国の妊産婦死亡数の約5分の1は大阪が占めていると懸念を示し、危機的状況の共有とOGCSの周知を促した。