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いちばんの銷夏法(しょうかほう)

府医ニュース

2025年7月30日 第3115号

 今年の夏も暑い。
 油照りという言葉がぴったりな酷暑である。以前より猛暑日が増え、地球温暖化の影響か、年々暑くなると感じている。最高気温35度以上を指す「猛暑日」は、2007年気象庁の予報用語改正で、「熱中症」とともに追加された語句だ。
 打ち水やすだれ、風鈴の音色。江戸時代からの暑さ対策は、現代には、それこそ焼け石に水かと思っていた。徳川幕府の気温観測「霊験候簿」や水戸藩商人「大高氏記録」、山形県川西町の古日記の天候記録などより、推定誤差を考慮しても、1850年代前半も、現在に匹敵するほど暑い時期があったようだ。1875年に、35度を超える猛暑日がすでにあったという記載もある。自然の周期的な変動、太陽活動周期やエルニーニョなどの影響らしいが、1861年江戸に滞在していたシーボルトは、「7、8月は、江戸湾と江戸周辺では高温。ときに木陰でも34度を超えることがある」と記し、黒い瓦屋根と密集した住環境の影響を指摘している。戯曲者滝沢馬琴の「馬琴日記」から、熱中症は「中暑」や「霍乱」と呼ばれ、当時の江戸の庶民にも広く認知されていたことが知れる。もし、当時の江戸の人々が猛暑や熱波をものともせずに生活できていたとすれば、災害に強い社会の手がかりがあるのかもしれない。

 暑き日を
   海に入れたり
 最上川 
松尾芭蕉

 昔も、夏は暑かったのかと思いをはせるのが、今年いちばんの銷夏法である。(颯)