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時事
府医ニュース
2025年7月30日 第3115号
7月4日、厚生労働省から「令和6年国民生活基礎調査」の結果が公表された。65歳以上の高齢者がいる世帯数が過去最多となり、全世帯の50.3%を占めた。内訳は、単独が32.7%で初めてトップとなり、夫婦のみ31.8%、親と未婚の子のみ20.4%と続く。昭和61年には44.8%を占めた三世代世帯は、わずか6.3%で過去最少となった。実に高齢者がいる世帯の3分の2近くが、高齢者のみの世帯である。このような中、高齢者向けの住まいに関し、同省の「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」で議論が進められている。6月20日の第4回会合では、これまでの議論の整理(案)が議題となった。
法律に基づく高齢者向けの住まい「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」の関係は複雑である。
有料老人ホームは、①食事の提供②介護(入浴・排泄・食事)の提供③洗濯・掃除等の家事の供与④健康管理――のうち1つ以上のサービスを提供する施設で、設置主体は問わない。事前届出義務がある。そして、介護保険の特定施設入居者生活介護(要介護者を対象とした、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話)の指定を受けたものが〝介護付き〟、受けていないものが〝住宅型〟、介護が必要となった時には退去しなければならないものが〝健康型〟となる。令和5年の総定員数の割合は、介護付き42.6%、住宅型57.3%、健康型0.1%である。
サ高住は、▽ハード面(床面積原則25平方㍍以上、バリアフリー等)▽サービス(状況把握・生活相談の両者が必須)▽契約内容――についての基準を満たした住宅の登録制度である。義務ではない。有料老人ホームの4サービスいずれかを実施している場合は、住宅事業者の希望の有無にかかわらず有料老人ホームにも該当する(この場合届出は不要)。昨年3月末時点で、サ高住の96.3%が食事提供を行っているため、現実には【ほとんどのサ高住は、有料老人ホームでもある】。
全国の定員数は、昨年時点で、サ高住が28万8424人、サ高住を除いた有料老人ホームが67万3689人である。サ高住の増加が鈍化している(この5年間の増加率:16.5%)のに比べ、サ高住ではない有料老人ホームは増え続けており(同24.8%)、昨年には介護老人福祉施設の利用者数を上回っている。高齢者人口に対する定員数の割合を都道府県別にみると、大都市圏で高い傾向にあり、全国平均2.41%に対して大阪府は4.08%で全国2位である(施設数では1位)。
検討会では、▼未届施設(令和6年で3.3%)▼前払金の保全措置を講じていない施設(同1.0%)▼安い入居者負担で利用者を囲い込み、関連法人による外付け介護サービスで利益を上げるビジネスモデル▼疾患や状態に応じて決まる紹介料──などが問題視され、指導監督のあり方が重要な議論となっている。
世帯の状況は大きく変化した。有料老人ホームには地域包括ケアシステムの中核との声もあがる。よりポジティブに捉え、人生において積極的な活用を考えられるよう、知恵を集めることが望まれる。(学)