TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

傍聴記

医療現場から中央へ、対話の重要性を実感

府医ニュース

2025年7月16日 第3114号

 梅雨明け前の6月22日、30度を超える暑さに皇居ランナーの熱中症を危惧しながら初めての日本医師会館に向かった。近畿ブロック控室で本日の次第、注意事項をお聞きし傍聴席へ向かう。第159回日医定例代議員会は松本吉郎・日医会長のあいさつで始まった。骨太の方針2025において医療機関の経営危機や物価高騰、賃金上昇対応について日医の要望に沿った議論が行われたのち、社会保障関係費に関する記載が「税収等を含めた財政の状況を踏まえ」と明記されたことで日医の求める税収上振れ分の活用の視点が盛り込まれたことを強調。MAMISの活用等による組織強化、新たな地域医療構想、人材確保、医療DX、医薬品を巡る最近の状況、7月参議院議員選挙の重要性など多岐にわたり伝えられた。
 続いての事業報告後、議事では入会への門戸を広げるため、卒後5年経過後の臨床研修医についても会費減免の適用が承認された。19題の代表質問では各地域に共通する課題や地域特有の問題点等多様な質疑応答が行われた。有料職業紹介事業者に対する高額な紹介手数料の問題点は東京都の大坪百合子予備代議員と栃木県の長島徹代議員から提起され、紹介手数料の平均が看護師159万円、医師335万円、年収の30%に及ぶ実情は医療機関経営に深刻な影響を与え、より良い医療を提供するための診療報酬が他業種に流れていると指摘。紹介業者の実情を紹介される本人も国民も知らないことが問題との意見が挙がった。厚生労働省からハローワークへの医療介護福祉分野への注力が提案され、日医から有償事業者に対する規制の強化による紹介料の適正化を国に要求すると伝えられた。大阪府の笠原幹司代議員の女性医師バンクの認知度向上の提案等多数の関連意見が述べられ、全国的な問題の共有と関心の高さ、日医から国への働きかけの重要性等実感できる答弁であった。
 府医からの代表質問では前川たかし予備代議員が増加する医療的ケア児の支援について、診療報酬による支援以外に対応できる人材の確保、レスパイトや急変時の受け入れ体制の確保が急務であると問いかけ、日医からの回答では都道府県医師会と行政の連携による各地域における在宅医療体制整備が必要と述べ、成人を迎えた医療的ケア者についても診療報酬について要望していると伝えられた。家族に不可欠なレスパイトについて医療型事業所が少なく福祉型の受け入れ拡充が必要となる。医療との連携のため障害福祉等サービス報酬やこども家庭庁予算等での手当の検討が必要と強調した。関連質問ではデイサービスや学校など自宅以外の往診と訪問看護について要件緩和の要望や、災害時対処の問題点等多数の意見が寄せられた。その他スイッチOTC、セルフメディケーション問題に対して大阪府の大平真司代議員から医療の公的保険でのカバーの継続、処方権の維持、医療安全の確保等の要望が伝えられ、日医として明確に反対の立場を表明されたことには安心感を覚えた。
 初めての傍聴であったが一朝一夕では解決し得ない医療問題の解決のため、診療の現場から地域医師会、日医、国へとつながる質疑応答の積み重ねがいかに大きな意味を成すかを実感する機会となった。(昌)