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時事
府医ニュース
2025年7月2日 第3113号
厚生労働省は5月1日開催の第194回社会保障審議会医療保険部会における委員会設置(案)の了承を受けて、26日に第1回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催した。議事は委員と事務局の紹介に続いて、鹿沼均保険局長から経緯の説明があり、「丁寧」の言葉を3回認めた。委員長には社会保障審議会医療保険部会長の田辺国昭・東京大学大学院教授が就任した。
まず、設置の趣旨について事務局より説明があり、高額療養費については秋までに改めて検討を行い、方針を決定するとされており、委員会の議事は原則公開とする。次いで、高額療養費制度の概要が示されたが、3月7日の石破茂総理大臣の制度見直しの実施見合わせ発言にも言及した。
田辺委員長は、高額療養費の見直しに関しては、昨年の医療保険部会で議論を重ねたものの、長期に療養されている患者団体の意見を伺う機会がなかったという点が、大きな課題として指摘された。そのような課題に対応するため、この専門委員会が立ち上がったものであり、このような経緯を踏まえると、まずは患者団体の皆様方から意見を伺うのが適当ではないかと述べて、最初に全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介委員と日本難病・疾病団体協議会代表理事の大黒宏司委員に発言を求めた。
天野委員は委員提出資料を基に昨年12月に厚労大臣などに対して「高額療養費制度における負担上限引き上げの検討に関する要望書」の提出に始まり、1月の衆議院厚生労働委員会での質疑応答と2月の福岡資麿・厚労大臣らとの面談の内容に言及した。専門委員会での検討に当たっては▽4月16日の衆議院厚生労働委員会での決議に基づき、高額療養費の支給を受けた者の療養に必要な費用負担の家計に与える影響を分析、考慮するとともに、必要かつ適切な受診への影響に留意すべき▽高額療養費制度は「大きなリスク」に備えるものであり、我が国の公的医療保険制度の根幹を成すものと考えられることから、医療費節減に資する他の代替手段を優先かつ十分に検討すべき――と主張した。これら2点を十分に検討してもなお高額療養費の負担上限額の検討が必要との結論に至った場合には支給を受ける者の支払能力に対する医療費負担割合を十分に考慮し、過重な負担割合とならないことなどに留意することを求めた。
大黒委員は医療費負担を考慮して最適な医療から離れると、さらなる医療費がかかったり、障害が引き起こされたりする危険性があり、重症化や障害の発生は不可逆的に起こる可能性を指摘し、そこまでの危険を冒して、受診抑制の可能性がある高額療養費の見直しを今行うべきかを考える必要があると述べた。
その後、自由討議となり、各委員からは、内容が十分に精査されないままに、本制度を利用している当事者の意見が十分に反映された見直し案になっていなかったことに対する反省をする発言が多くあり、本委員会での検討の重要性が指摘された。今後の議事に期待したい。(中)